私は好き好んでこの役目を引き受けたわけではありませんし、あなたももちろん違うでしょう。
家族にとっては、真の被害者である生贄が加害者であり、真の加害者である彼ら自身のほうが被害者なのです。
あなたに関して、家族の中で当たり前とされていた事実に、どのような嘘があったのか考えてみましょう。
家族に愛されるために
必要だったこと
もしあなたが、家族に欲求や正直な気持ちを伝えたり、怒ったり、対抗したり、激しく抗議したりしていたとしたら、どうなっていたか考えてみてください。
そうしたとして、彼らに愛されたでしょうか?
ほとんどの人は経験上、たとえそうしていたとしても、愛されることはなかっただろうと知っています。私たちはあらゆる感情をあらわにした上で、「問題児」というレッテルを貼られたのです。
毒家族は、自分たちが与えた痛みを詳しく知ろうともしませんし、認めることすらしません。
あなた自身の経験から、あなたの怒り、飢え、正直さ、いらだちと悲しみの裏にある痛みを、家族があえて無視したということはわかっているはずです。
彼らは、あなたが叫んだ真実の正当性を見て見ぬふりをし、あなたを責めました。あなたの気持ちを慮(おもんぱか)ったり、いたわったりするのではなく、一切取り合わなかったのです。
シャロンから、こんな経験談を聞きました。
「いい親」と呼ばれるために
犠牲にされた子
10代の頃に母親に大嫌いだと伝えたところ、母親は「あなたが私を嫌おうと、私はあなたを愛している」と答え、今でもそのやり取りを自慢げに話すのだそうです。
表面上はいかにもいい話に聞こえますが、その裏に隠されているのは、母親がシャロンの反抗的な態度を引き出すために、あえてシャロンを深く傷つけたという意地の悪い事実です。
シャロンが自分を憎むように仕向けた上で、立場をひるがえして「いい母親」として脚光を浴びようとしたのです。
しかも母親は、この話を子育て中の美談として人前で話すのだそうです。
これはまさにシャロンを生贄にしているいい例です。
シャロンの母親は、自分が無条件に娘を愛する献身的な母親であり、一方、娘は醜悪で手に負えない、という偽りの人間像を嬉々として作り出しています。
もちろん、真実は正反対です。
シャロンが大人になってからも母親は、シャロンの気持ちが理解できないときは決まって、「あなたには何を言っても、何をやってあげても無駄ね」と皮肉を言います。これもまさに、シャロンを生贄にする行為です。
シャロンのネガティブな気持ちに対する母親の反応は、子供の頃から変わりません。
幸運なことにシャロンは、精神的に支配しようとする母親がこのような反応をするのは、自分自身にとって不都合なことが起きたときだと気づくことができました。