オスザルがボスに隠れて交尾するとき、岩陰から顔を見せる驚きの理由弱いオスは、ボスザルに見つからないよう岩の影に隠れてメスと交尾をすることがある。このとき弱いオスは、ボスザルの居場所を見極めるために、岩陰から顔を出す(写真はイメージです) Photo:PIXTA
*本記事は本の要約サイト flier(フライヤー)からの転載です。

おすすめポイント

 言葉を操ることは、人間に与えられた特権であり、人間を人間たらしめる要素である。そのように感じている人は多いだろう。だがそれは事実ではない。なぜなら、多くの動物が言葉を使ってコミュニケーションを取っているからである。

『動物たちは何をしゃべっているのか?』書影『動物たちは何をしゃべっているのか?』 山極寿一・鈴木俊貴著 集英社刊 1870円(税込)

 それは単なる鳴き声ではない。文法を持ち、イメージを伝え、ときに嘘の情報で他の動物をコントロールすることさえできる、言語としかいいようのない複雑で高度なものだ。

 本書はそんな動物の言語を研究する2人の著者、「ゴリラになりたくて群れの中で過ごした研究者」と「シジュウカラになりたくて年の半分を森で過ごす研究者」の対談である。山極寿一は京都大学の前総長を務め、霊長類研究に取り組んできた。フィールドワークのようなかたちで実際にゴリラと共に生活する手法で、その生態を観察してきた。もうひとりの著者、鈴木俊貴は鳥類の研究者だ。シジュウカラ科に属する鳥の研究を専門としており、その意味や文法の解明を目指している。

 分野の最前線に立つふたりの研究者の視点を通じて、本書は言語という切り口から、動物がどのように世界を捉えているのかを教えてくれる。

 言葉は人間だけの特権ではない。しかし、人間にとって言葉を操ることが重要な要素であることは間違いない。動物にとっての言語世界を明らかにすることは、人間と言語の関係を相対化し、より理解を深めてくれる。動物たちが何をしゃべっているのかを知ることは、我々人間が何をしゃべっているのかを理解することなのだ。(池田明季哉)