子どもが自分から勉強をするようになってくれたらラクなのに……。こう思っている親は多いのではないだろうか。しかし、小学生の男の子に対して自主性を期待しないほうがいいと言うのは、首都圏の有名中学に合格者を多く出している進学塾VAMOS代表の富永雄輔氏だ。大事なのは、意思に頼るのではなく仕組みで自然と勉強に向かわせることだという。この記事では、富永氏の著書『男の子の学力の伸ばし方』から、男の子が自分から勉強するようになるために、家庭ですぐに実践できる方法について紹介する。(構成:小川晶子)
落ち着きがなく、集中力がないのが普通の小学生男子
「宿題やったの?」
ガミガミ言いたくない派の筆者だが、小学生の息子たちに何百回言ったことだろうか。
何も言わずに放っておくと、結局やらずに一日が終わるので仕方なく声をかけている。勉強より遊びに気持ちがいっている男の子を机に向かわせるのは、簡単とは言えない。
学校の宿題ならまだいいが、中学受験にチャレンジをする場合、母親の心労はさぞや大きいだろうと思う。
落ち着きがない男の子が自分から勉強するようになるには、どうしたらいいのだろうか。
首都圏の有名中学への合格率トップクラスという進学塾VAMOS代表の富永雄輔氏は、性差に注目して「男の子が学力を伸ばす方法」についてロジカルに体系化している。
入塾テストを行わないVAMOSには、大手進学塾についていけずドロップアウトした子たちもやってくるという。
そういう子たちには男の子が多い。親は「この子、このままで大丈夫か?」と心配になり、「どうしたらいいかわからない」と頭を抱えているそうだ。
しかし、富永氏はこう言う。
それでも、ロジカルな学習法さえ身につければ、どんな子でもちゃんと成長し、結果を出してくれますから心配には及びません。(P.32)
とても心強い言葉だ。
一方で、「中学受験で頑張れる男の子は、もともとやる気があるに違いない、集中力があるに違いない」というのは、ある意味都合のいい幻想なのだと気づかされる。
富永氏はこうも言っている。
耳が痛いが、その通りなのだと思う。
家庭で何もせずに「うちの子、やる気がないからなぁ」と言っているだけでは何も変わらない。
ただ、難しいことをやらなくても、ちょっとした習慣づくりで大きく変わることを本書では教えてくれている。
それが「自分から机に向かう子に変わる13の『勉強習慣』」(第6章)だ。この中から、今すぐ真似したい習慣を3つ紹介したい。
1. 「15分ルール」で差をつける
小学生の子どもが集中できる時間は短い。普通の小学生は20分集中できれば充分だという。
だから、勉強にまとまった時間をとる必要はなく、「15分勉強する習慣」をつけることを考える。それだけでも、ゆくゆくは大きな差になる。
「○○君、あと15分で夕ご飯ができるから、それまで勉強しておいて」
「おーい、〇〇。15分勉強したら、お父さんと一緒にお風呂に入ろう」
こうして、子どもたちに15分の勉強習慣が身につくと、外出先でもちょっとした時間があれば取り組めるようになります。(P.224)
2. 通学前の「15分」をルーティン化する
通学前の朝の時間は、頭も冴えているうえ、家族が揃いやすい。
だから、その時間帯に15分だけ、子どもの勉強に親が関わる時間を捻出する。
漢字を30個書くとか、計算問題を3問解く、朝のニュースで気になったことを1つ話題にして、一緒に調べる時間を持つといったことで良いそうだ。
3. 男の子はリビングで勉強させる
男の子は、見ていないと好きなことをやってしまうので、親の目が届く場所で勉強をさせると良いそうだ。
精神的な幼さもあるので、女の子と違って高学年になってもリビング学習に抵抗がないというのもある。
また、リビング学習は、勉強しているときの姿勢を親がチェックすることができる。成績が上がらない子は、体が「勉強する型」になっていないという。
足をぶらぶらさせていたり、肘を机についていたりするのはNG。姿勢を正してあげて、勉強する型を作ることは基本であり大事なことだろう。
以上のように、意思に頼らず、仕組みで自然と勉強に向かわせることが重要だ。
「勉強したの?」「宿題やったの?」とガミガミ言ったり、自分からやる気になるのを待ったりするのではなく、簡単な仕組みを作るわけである。
ここに挙げた3つは、小学生の男の子に合わせてハードルを下げながら、着実に積み重ねていくことができる学習習慣である。
本書を参考に実践し、ぜひ「家庭力」を上げていきたい。