偏差値35から東大合格を果たした、現役東大生の西岡壱誠さんの著書『「思考」が整う東大ノート。』が話題だ。2浪しながらも成績がなかなか上がらず、崖っぷちに立たされていた西岡さんは、頭がいい人の「ノートやメモの取り方」には共通点があり、それを真似することで、誰でも質のいいインプットやアウトプットができるようになると気がついたという。勉強法を見直し、ノートの使い方をガラッと変えた結果ぐんと成績が伸び、見事合格することができた。
この経験から西岡さんは、「東大生は、誰もがずば抜けた記憶力を持つわけではない。思考を整理するのがうまい人が多いのだ」と気がついた。その後、1000人以上の東大生のノートを分析し、その結果をまとめたのが『「思考」が整う東大ノート。』だ。本連載では、そんな本書から、仕事にも勉強にも役立つ、「見返さない」のに頭に入るノートの作り方を学ぶ。今回のテーマは、「相手の話を正確に整理するためのコツ」だ。(構成:川代紗生)
「ちゃんと話聞いてた?」上司の言いたいことがわからない理由
「あのさ、ちゃんと話聞いてなかったの? 指示が全然伝わってないじゃないか!」
あなたは、上司からそんなふうに怒られたことはないだろうか。
上司から指示を受け、それをチームメンバーに共有する。会議で議事録を取り、欠席した人に共有する──などもあるだろう。
私は新入社員の頃から、これがどうも苦手だった。
上司との相性があまりよくなかっただけかもしれないが、「あ、あとこれも」「忘れないうちに言っとくけど」「ところであの案件は……」など、わーっと捲し立てるように言われ、必死にメモを取っているうちに、何がなんだかわからなくなってくる。
覚えているかぎりチームメンバーに共有するも、なぜかうまく伝わらず、あとから「話聞けよ」と注意される……。こんなことは、日常茶飯事だった。
もはや最近は、めっきりレコーダーなどに頼るようになったものの、「相手の言いたいことがよくわからない」という読解力のなさは、これまでそれなりにハンデになっていたと思う。
「分かる」とは「分ける」こと
『「思考」が整う東大ノート。』を読んだとき、真っ先に感じたのは、「あっ、こんなにシンプルでよかったんだ」という安堵だった。
偏差値35から東大合格を果たしたという現役大学生の西岡壱誠さんは、情報を整理するときに必要なのは「分解」という行程だという。
自分が理解できる大きさになるまで分解することで、物事を理解できるようになります。(P.28)
本書で解説されている「東大ノート」の技術のうち、「メモノート」というやり方がある。
これは、情報をわかりやすい大きさまで分解し、頭を整理することで理解できるようなノートの取り方だという。
たとえば、冒頭で書いたような、「上司の雑な指示をわかりやすく整理したい」というとき、どうすればいいだろうか。
本書では、いくつかの「分解の型」「メモのコツ」が解説されている。なかでも、特に、今すぐにでも使える方法を2つ、紹介したい。
「原因」と「結果」で分ける
原因と結果を区別して考える、というのは、日頃から意識している人も多いかもしれない。だが、案外、「原因」ではないことを「原因」と早合点している場合もある。西岡さんはこう綴っている。
「事実」と「意見」で分ける
ビジネスの現場では、「事実」と「意見」を混同してしまうことが多い。
上司に指示されたときも、上司の主観なのか、それとも紛れもない事実なのか、判断するのが難しいこともあるだろう。
「売上が前年比5%落ちた。社員のやる気が足りないからだ! もっと気合を入れろ!」など、感情的に責め立てられたりすると、冷静に判断できなくなることもある。
そんなときは、一度ノートを開き、言われたことを一つひとつ、「事実」と「意見」に分解しながらメモしてみよう。
本書では、ノートの取り方として、このような例が掲載されている。
●打ち手:売り上げを増やす施策が必要
◉ポイントカードを作る
◉ポイントカードプレゼントキャンペーン
・ご家族に登録してもらうことで100ポイントプレゼントキャンペーンを行う(P.79-80)
「◯」は事実で、「●」以降は意見として区別するそうだ。
このように、◯や●などの記号をうまく活用すると、情報の整理もしやすい。
キャパオーバーで頭がパンクしそうなときは
私も実践してみたが、社内のやりとりだけでなく、取引先との打ち合わせなどでも活用できる方法だと感じた。
相手の言っていることを「原因と結果」「事実と意見」など、分けながらノートにメモすることで、知りたい情報を聞き漏らすことも防げる。
たくさんのことを同時に指示されると頭がパンクしてしまう。上司が何を求めているのかわからなくなってしまう……。
そんな人は、この「メモノート」の技術を使って仕事をしてみてはいかがだろうか。
キャパオーバーでパニックになっても、一度冷静になって思考をクリアにしてみれば、案外、難しい問題ではなかったと気づけるかもしれない。
本書のフォーマットに沿って分解していけば、相手の言いたいことも適切に理解できるようになるだろう。