偏差値35から東大合格を果たした、現役東大生の西岡壱誠さんの著書『「思考」が整う東大ノート。』が話題だ。2浪しながらも成績がなかなか上がらず、崖っぷちに立たされていた西岡さんは、頭がいい人の「ノートやメモの取り方」には共通点があり、それを真似することで、誰でも質のいいインプットやアウトプットができるようになると気がついたという。勉強法を見直し、ノートの使い方をガラッと変えた結果ぐんと成績が伸び、見事合格することができた。
この経験から西岡さんは、「東大生は、誰もがずば抜けた記憶力を持つわけではない。思考を整理するのがうまい人が多いのだ」と気がついた。その後、1000人以上の東大生のノートを分析し、その結果をまとめたのが『「思考」が整う東大ノート。』だ。本連載では、そんな本書から、仕事にも勉強にも役立つ、「見返さない」のに頭に入るノートの作り方を学ぶ。今回のテーマは、「頭がいい人の思考の整理法」だ。(構成:川代紗生)

東大ノートPhoto: Adobe Stock

東大生は抜群の記憶力を持っているわけではない

 知り合いに、ものすごく優秀な先輩がいた。

 頭の回転が速く、とにかく仕事ができる人で、営業成績もよかった。驚くべきは、クライアントが言った情報を、事細かに覚えていることだった。

 30分程度、短い時間でさらっと雑談したことを、ちょっとしたことでもよく覚えているのだ。

 一方で、私は物覚えが悪いのが悩みだった。上司から指示されたことを忘れてしまうことも多々。ノートにメモを取ってもぐちゃぐちゃで、あとから見返すと、要点がさっぱりわからない。

 頭のいい人は、生まれつき脳のキャパが大きいのだろう。この差は、埋められない。しょうがないことなのだろうと、半ば諦めていた。

 だから、『「思考」が整う東大ノート。』にこんなことが書かれていて、驚いた。

 東大生は、必ずしも、抜群の記憶力を持っているわけじゃない。記憶のキャパは一般の人と同じ。ただ、整理整頓、情報の畳み方がうまいのだ──と。

「記憶力がいい人」には2種類ある

 偏差値35から東大合格を果たした現役東大生であり、本書の著者・西岡壱誠さんは、1000人以上の東大生のノートを集め、東大生がどのように勉強しているのか、メモやノートを活用し、どのように思考整理しているのかを調べたそうだ。

 すると、「記憶力がいい人」には2種類存在すると気がついた。

 1つは、生まれつき記憶力がいい人。脳のキャパシティが大きく、人並み以上の情報を吸収できるタイプだ。

 本書を読むまで私は、東大生のほとんどがこういった、いわば「天才型」ばかりだと思っていた。

 けれど実は、純粋な記憶力自体がいい人は東大にはあまりいないらしい。忘れっぽい人も多いそうだ。

 では、にもかかわらず彼らが、膨大な量の知識を頭に入れることができるのはなぜか?

 それは、「整理整頓の仕方が優れているから」だという。これが、「記憶力がいい人」の2つめのパターンだ。

 西岡さんは、こう語る。

たとえば、服を畳まないでクローゼットに突っ込んでいると、あっという間にクローゼットはいっぱいになってしまいますよね? しかし、服を畳み、同じ種類のものをきちんと整理して棚にしまっていくようにすれば、本当に多くの服を入れることができます。無駄なスペースなく、たくさんのものを収納できるわけです。
これと同じで、情報は整理すればするほどたくさん頭の中に入るものなのです。(P.105)

情報は「漢字2文字」に畳む

 では、どのように情報を整理すれば、スムーズに記憶できるようになるのだろうか。

 本書ではさまざまなやり方が掲載されているが、その中でも今回は、とくに印象深かった解決策を1つ、紹介したい。

 それは、「漢字2文字に言い換える」というやり方だ。

「どういうこと?」と思うかもしれないが、非常に合理的で実践しやすく、私も早速自分のメモに取り入れている。

 つまり、記憶しておきたいことをメモするときに、長い言葉や表現を、漢字2文字程度の熟語に言い換えてみよう、という方法なのだ。

 本書では、こんな例が挙げられている。

 ・「Aが去年に比べてパワーアップしている」→「強化」
 ・「Aによって、Bが引き起こされた」→「A=原因 B=結果」
 ・「Aの優先順位が高く、早めに終わらせてほしい」→「A=緊急」
 ・「AがBを行う上での重要なポイントになる」→「A=要所」

このように、与えられた情報を漢字2文字で表すようにすると、理解が深まるとともに、単純に覚えることが減ります。20文字くらいが一気に2文字に変換されているので、分量だけで考えても1/10になっているわけですからね。頭のいい人はこのようにして、情報を「畳んで」いるのです。(P.181)

 西岡さんがこう語るように、この「漢字2文字で表す」という方法には、「要約して言い換えるという作業を通し、情報をより深く理解できる」「覚えなければならない文字数が減る」など、さまざまな効果がある。

頭の中をスッキリ片付けよう

 本稿で紹介した「2文字に変換する」という方法は、あくまでも本書のごく一部だ。だが、このようにちょっとした工夫をするだけでも、情報はずいぶんと整理しやすくなる。

 本書の中で西岡さんは、人の記憶を「クローゼット」に例えている。

 みんなそれぞれ、頭の中にクローゼットを持っている。中には、とんでもなく大きなクローゼットを持っている人もいる。

 しかしほとんどの人は、そうではない。それは東大生だって同じだ。みんながみんな、特大サイズのクローゼットを持っているわけではない。

 それでも多くの知識を記憶できるのは、クローゼットに整理整頓してものを入れているからだ。

 東大生は、情報を畳むのがうまい。どうすればコンパクトにまとめられるか、どうすればより多くの情報を収納できるかを理解している。

「言われたことをすぐに忘れる人」とそうでない人の差は、頭の中のクローゼットをすっきりと整えられているかどうかにある。

 本書のノート術は、思考をすっきりと整理するための技術なのだ。

 資格試験などの勉強にかぎらず、仕事のさまざまな場面でも活用できそうな技術が満載の本書。

「記憶力ないなあ……」「知識が豊富な人に憧れる」と思ったら、一度試してみてはいかがだろうか。