岸田内閣の支持率が急落している。毎日新聞の2023年11月世論調査によると、支持率は21%、不支持率は74%になっている。10月から比べると、支持率は4.5%ポイントの低下、不支持率は6%ポイントの増加である。もちろん、支持率の低下と不支持率の上昇が大きな話題になっているのだが、私は「分からない、無回答」の人に注目したい。日本では、このように答える人は多い。「どちらでもない」という問いがあれば、さらに大きい比率となるだろう。これらの回答は、白黒はっきりさせたくない日本人の本質を表している。また、分からないことを分からないと答えるのは、日本人の美質を表しているとも言えるだろう。そして、「分からない、無回答」と答える人に見限られたことこそが、岸田内閣の支持率低下の本質を示していることを明らかにしたい。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)
岸田政権の
支持率増減の要因
下のグラフは「支持する」「支持しない」「分からない、無回答」(以下、「分からない」と表記する)と答えた人の割合の推移を示したものである。ここで示したのは、NHKの世論調査である。毎日新聞の世論調査でないのは、NHKの世論調査がより安定した結果を示すとされていること、および、長期の時系列が取りやすい形で提供されていることによる。
まず、読者の方々に思い出していただくために、支持率とそれに影響を与える主な事象を整理する。
2021年10月に岸田内閣が発足して以来、徐々に支持率を高めてきた。これは、コロナウイルスワクチンの接種が進み、感染者が減り、コロナ収束の希望が見えたからだと私は思う。ところが、22年8月以降、支持率が低下してきた。その後23年になると徐々に支持率を高めたものの、6月以降は再び低下傾向となった。
2022年8月以降の低下は、旧統一教会と自民党の癒着のスキャンダル、安倍晋三元首相の国葬の決定が影響しているとされている(「旧統一教会、国葬 失速する岸田政権」朝日新聞、2022年9月12日)。
2023年3月の上昇は、戦時下のウクライナに赴き、ゼレンスキー大統領と会って連帯を示したことによる。
23年5月の上昇は、広島サミットで、G7首脳がそろって平和記念資料館を訪れ、献花したからだ。後に歴史の教科書に掲載されるような写真を見れば、支持率が上がるのも当然だ。しかし、外交は票にならないといわれるように、支持率を長期的に維持する効果を持たず、低下していった。
6月以降の低下は、マイナカードを巡る混乱だろう(「内閣支持率の急落、政府・与党内に衝撃…岸田首相はマイナ対策への注力で信頼回復図る考え」読売新聞、2023年6月26日)