「人と話すこと」に苦手意識をもつ人はたくさんいる。できればすべてメールですませたいという人すら。残念ながら「人と話すこと」をゼロにはできない。仕事となればなおさら。いったいどうやって克服すればよいのだろう。
答えは実はシンプル、あなたの発するひと言を変えるだけだ。周囲を緊張させたり、気持ちを萎えさせたりするダメなひと言を、その場の空気をあたたかくするひと言、自然に話したくなるようなひと言に変えてみよう。
そこでいま話題を呼んでいるのが、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた人気ファシリテーション塾塾長の中島崇学氏の著書『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』だ。
今回は、同書から特別に抜粋し、人前で話すときについ「緊張してます」と言ってしまう人が無意識に伝えているヘンな空気を生むメッセージと、それを回避するひと言を紹介する。

話すときに緊張してしまうPhoto: Adobe Stock

まず自分に向けてひと言、言おう。

 ガチガチに緊張して「話すのムリ、頭イタイ……」と思っている人が、場を和ませるための言葉を工夫して、いくら連発したところで効果ゼロです。

 飛行機に乗ると、離陸前に必ずCAから非常事態対応の説明があります。
「酸素マスクを装着してください」といったことですが、子ども連れの乗客に向けて必ずひと言付け加えられます。

「お子さんではなく、まず自分に酸素マスクをつけてください」
 自分の安全を確保していなければ共倒れになるということです。それと同じで、自分向けのひと言が必要なのです。

緊張してますイラスト:草田みかん

自分を整えるために、まずは自分を和ませる言い方を。

 ありのままの弱さを認めると自分を整えることができますが、じつは「緊張しています」は禁じ手です。なぜなら……

●これからの時間に対する不安、おそれ
●「十分できなくても許して」という逃げや甘え

「緊張しています」という言葉の裏に隠されたこんな思いが、伝わるからです。

 緊張するのは自然なことで、それ自体は悪くありません。「うまくいかなかったらどうしよう」とネガティブな心理状態になることが問題なのです。

 そこで、「緊張してドキドキするのは、それだけ大事な会議だから」と認めることで、ニュートラルなモードに切り替えます。

 ニュートラルに自分を整えるための○の言い方が、「引きしまった空気」です。
アウェーな空気というネガティブな表現を、引きしまった空気だとポジティブに言い換えることで自分をほぐす。これならば、甘えにもなりません。

●「圧倒されるほどの迫力です」
●「真剣さが満ちていますね!」

こんな言葉もいいでしょう。

緊張を解きたい

繊細さを伝えようとして反感を生むことも

 甘えと思われずに自分について表現したいなら、身体の状態をこんなふうに言うのもありです。

●「武者ぶるいしています」
●「心臓がワクワク小躍りしています」
●「手に汗を握っています」

 どれも「緊張しています」の言い換えですが、かなり印象が変わりませんか?
 身体的に反応しているという「弱み」は見せていますが、ややユーモラスで、相手に甘えだと取られないところがポイントです。

「朝から頭が痛くなり、実はメンタル弱くて胃が……」という“繊細さんアピール”は、同情されるどころか反感を買うだけなので、くれぐれも口にしないように注意しましょう。

落ち着いたら強気のひと言も試したい

 こうしてニュートラル・モードで自分を落ち着かせたら、次はやる気や希望に焦点を当てます。

●「ピリッとした空気でやる気まんまんです」
●「ビビってしまう迫力の空気。今日は大きなものが生み出される気がします」
●「この場の雰囲気に突き動かされて、自分の力を超えていける気がします!」

 やや強がりな言葉でも、口に出すことによって自分で自分を「だます」効果を期待できます。

 それだけでなく、ポジティブな感情を口に出すことで、実際に自分の状態が良くなっていくことを実感できるはずです。そのことで、その場にいる人に、「この会をいいものにしたいです!」と、前向きなメツセージを伝えることができます。

 さらに、ふわっとした希望がその場の空気にほんの少し交じります。
 自分の緊張が解けるだけでなく、相手との距離も縮まるでしょう。