あまりに低いボス突破率を見かねてか、発売元のフロム・ソフトウェアが発売翌日に、(おそらくは想定外で)「ゲーム序盤のTips」ページを公式ウェブサイトに追加したことは興味深い。さらに、すでにボスを討伐した人はこれから挑戦する人へ手を貸す人が多く、熟練の共闘者が急増。結果、1体目のボスを倒せた割合は22.4%から、わずか1週間で62.8%へと急上昇したのも面白い。

要素が非常に多いゲームなので、チュートリアルを流し見してゲームを進めてしまい、詰まった人にとって役に立つコンテンツが掲載されている
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この難易度設定については、アメリカ市場の特殊性も大きく関係している。たとえば日本とアメリカとで家庭用ゲームの売上を比較すると、アメリカは日本の3倍近く大きい。つまりは日本市場でヒットを狙うよりもアメリカ市場でヒットした方が販売本数が増えるため、日本生まれのゲームソフトでも北米市場向けに方向転換したゲームは『バイオハザード』シリーズや『ストリートファイター』シリーズをはじめとして数多くある。それに英語版ソフトを作っておくだけで、英語を公用語として使っているイギリスやオーストラリア、カナダなどでも販売できるという副産物もあるので、なおさらだ。

ただしアメリカ市場にはゲームソフトに限らず、購入した商品は開封後でも返品が可能という商習慣がある。ゲームソフトの場合はレシートがあり、パッケージと中身がそろっていれば、1週間(期間はショップごとに異なる)以内であれば全額返金されるというものだ。ゲームソフトを返品されたショップはゲームメーカーへ返品するため、リスクを負うのはゲームメーカー側だ。

そこでアメリカのゲーム業界が選んだ販売戦略は、「1~2週間ではクリアできないくらい、歯応えのあるゲームを作ること」。そう聞くと、ここまでの説明がふに落ちるのではないだろうか。世界市場向けのゲームソフトの販売本数報告が「出荷」本数をベースとしているのは、こうした返品本数をカウントしていないことも関係している。

プレイして分かる『ELDEN RING』の本当の魅力

ビジネスとして見た『ELDEN RING』の話だけではなく、ゲームソフトの内容についてもお話しよう。

本作は『DARK SOULS III』の後継作というイメージだが、ゲームの進行自由度は大きく上昇している。広大なマップの中を自分の好きな順番で巡り、強い敵と遭遇しても戦わずに逃げることもできるという自由度の高さもセールスポイントだ。

筆者の印象は『DARK SOULS』シリーズの難易度やテイストを踏襲しつつ、ゲーム性としては『ゼルダBotW』に似たフィールド探索要素と自由度を盛り込んだように感じた。