「Nreal Lightなどで体験できる6DoFは、体験するまでのハードルが高いんです。どこに立ってどう操作すればいいのか、といったことを理解してもらうために、体験する人を導くアテンド係が必要になります。体験に慣れるために費やす回数や手間などは無視できません。一方で、Nreal Airの3DoFは1人でもできるARになります。現状、6DoFで一般消費者向けのARコンテンツを提供するのは難しいかもしれません。一方、エンタープライズ向けのように、体験までのプロセスをコントロールできる場合であれば、今でも6DoFでのアプリケーションは実用的かと思います」(小林氏)

MESON COOの小林佑樹氏
MESON COOの小林佑樹氏

MESONではNreal Air向けに、複数の開発案件が進んでいるという。そこからは、「ポストスマホ」の世界も見えてくる。

「ARグラスはポストスマートフォンと言われます。iPhone初登場の時にどういうアプリが最初に出たかを考えると、まずはツール系が出て、徐々にコミュニケーションやオンラインショッピング体験に広がっていきました」

「ARグラスも同じだと思っています。今ならば、リモートワークのコミュニケーション・サポートが有用なのではないか、と考えています。Zoomでは同じように対話していても、コミュニケーションしている感じがしない部分があります。そこに(ARグラスを)掛け合わせることで、キラーコンテンツになるのではないでしょうか。弊社でドコモショップでのデモ向けに提供したアプリの中に、リモートワークコミュニケーションを想定したものを入れたのはそのためです」(小林氏)

大手より早いスピードでARグラスを続々提供

一方で、Nreal Airにも課題はいくつかある。アプリがまだ増えていないこともそうだが、Nreal Airにつないで利用するスマートフォンは、かなり性能の高いものでないといけない。映像を見る、単純なディスプレイとして使うなら、スマホだけでなくPCでもMacでもiPadでもいいのだが、Nrealの提供するNebula環境を使ってARアプリを使うには、やはりCGの処理ができる、高性能なスマホが必要になる。

「確かにその点はハードルかと思います。 3DCGやセンサーを多用するため、スマートフォンの性能が高くないといけません。そこは多分、ゲームに使うPCと同じかと思います。ハイエンドな用途になるとハイエンドなPCが必要になります」(Yeo氏)

「ARグラスは小型化し、ゆくゆくは、スマートフォンをつながずに使う『スタンドアローン』なものになっていくでしょう。現状は黎明期です。映像が出るだけでいい、という人もいるでしょう。その上で今後、ARに求めるリッチ度も選択肢が変わってくると考えています。我々は、Nreal Air向けのアプリで、その時代に向けたキラーコンテンツのヒントを提示できたと考えています」(小林氏)