狂乱バブル ホテル大戦争#19Photo by Ryo Horiuchi

バブルに沸くホテル業界で“異端児”たちが躍進している。代表的なプレーヤーが「4つ星ホテル」カンデオホテルズを運営するカンデオ・ホスピタリティ・マネジメントだ。特集『狂乱バブル ホテル大戦争』の#19は、業界とは一線を画したカンデオの戦略や経営手法を解き明かす。また、新機軸を打ち出して大勝負に出るNOT A HOTELの裏事情にも迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

ビジネスホテルでも
ラグジュアリーでもない“4つ星”ホテル

「勢いのあるホテルは?」。ホテル業界の関係者にそう尋ねると、多くの口から出るのが、「ホテル業界の異端児」との呼び声が高い「カンデオホテルズ」である。

 カンデオといえば、きらびやかな内装と最上階に展望露天風呂とサウナを併設した「スカイスパ」、そしてビュッフェスタイルの豪華な手作り朝食が特徴だ。一般的なビジネスホテルよりも少し広い14~75平方メートルの客室を備え、ビジネスホテルでもラグジュアリーホテルでもない「4つ星ホテル」とうたい、ニッチ戦略を貫いている。

 ホテルの開発と運営を担うのは、2005年創業のカンデオ・ホスピタリティ・マネジメントで、ホテル業界では後発組だ。07年に熊本で2店舗を開業したのを皮切りに、次々と開業エリアを拡大。19年には、20店舗目となる「カンデオホテルズ大宮」をオープンした。

 開業エリアの拡大に伴って売上高も伸び、15年5月期の38億円から19年5月期には142億円までジャンプアップした。しかし、カンデオも新型コロナウイルスの感染拡大の影響をもろに受けた。21年5月期は売上高が66億円まで落ち込んだのだ。それでもカンデオは既存のホテルを閉鎖することなく、しかも出店攻勢の手を緩めなかった。

 20年以降、栃木・宇都宮や京都、大阪・心斎橋など6店舗を次々とオープン。今年は6月に大阪・枚方、7月に大阪・淀屋橋で開業した。足元では、28店舗(客室数は5770室)を運営する。売上高はコロナ禍の落ち込みを乗り越え、24年5月期に245億円に達した。

 なぜカンデオは、コロナ禍をくぐり抜けて破竹の勢いでホテルを拡大できたのか。実のところ、カンデオがホテルを拡大できた背景には、独自戦略があった。それは、同業他社が回避したがる「ハイリスク」の戦略だった。

 次ページでは、出店エリア拡大を支えたカンデオの独自戦略を解き明かす。カンデオと並んでホテル業界の異端児に挙げられる「NOT A HOTEL」の戦略にも迫る。