ドンキ創業者 安田隆夫の「遺言」#1Photo:Diamond

「ドン・キホーテ」で知られるパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が慌ただしい。創業者である安田隆夫氏が引退の準備に動き出した。今年に入ってから息子が入社し、経営陣、大株主を含めた後継体制を整備中だ。東京・西荻窪で35年前に「泥棒市場」から始まったPPIHは、今や時価総額にして2.5兆円を誇る、小売業界4位の巨大企業へと成長した。緊急特集『ドンキ創業者 安田隆夫の「遺言」』では、引退を前にした安田氏による独占告白をお届けする。特集の#1では、インタビューの前段として小売りの“異端児”のこれまでを振り返る。(ノンフィクションライター 泉 秀一)

35期連続増収増益の記録達成間近
セブンやイオンをしのぐ高収益企業

安田隆夫氏緊急インタビューで引退直前の心境を明かした「ドン・キホーテ」創業者の安田隆夫氏

 今、小売業界で最も勢いのある企業――。ドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の成長が止まらない。国内大手小売業の時価総額ではファーストリテイリングやセブン&アイ・ホールディングス、イオンに次ぐ4位。2024年6月期には売り上げが2兆円を突破する見込みで、国内上場企業では最長となるニトリホールディングスの35期連続増収増益の記録に並ぶ予定だ。

 ドンキといえば、天井まで積まれた商品棚やカラフルな装飾、印象的なPOP展開と派手なイメージが強い。店内で流れる「ドン・ドン・ドン・ドンキ」のテーマソングや、キャラクターのドンペンの愛嬌(あいきょう)も含め、どこか怪しさが拭えない。

 しかし実は、PPIHは小売業界でも有数の高収益企業であり、営業利益率は5.43%(23年6月期)、ROE(株主資本利益率)は15.65%(同)を誇る堅実な銘柄の一つだ。利益率やROEはファストリには及ばないものの、セブンやイオンをしのぐ水準だ。イメージと真逆の堅実経営には、創業者である安田隆夫氏の哲学が反映されている。