そこで論点になるのがプライバシーだ。企業がパーソナルデータを外部に提供していくにあたっては、個人情報保護法などの法規制を遵守するのはもちろん、消費者が安心できるようにプライバシーを十分に保護する仕組みが求められる。

ただLayerX執行役員でPrivacyTech事業責任者の中村龍矢氏によると、現状は「どのような方法を使えばプライバシーを保護できるのか」「どれくらいの量や粒度のデータまで提供して良いのか」といった観点で明確な基準が定められているわけではなく、それが企業がデータの利活用を進める上で高いハードルになってきたという。

LayerXの狙いは創業期から研究開発を進めてきたプライバシー保護技術を用いてこの課題を解決し、企業のデータビジネスを後押ししていくことだ。

「 (自社が保有するデータに関して)社外から引き合いがあったとしても、プライバシーの担保が課題になってなかなか実現できないという企業も少なくありません。企業が(法的な観点での)説明責任や透明性をしっかりと担保した上で、エンドユーザーに心配をかけることなくデータを社外へ提供できるような仕組みを広げていきたいと考えています」(中村氏)

新サービスのAnonifyは、プライバシー保護技術に関する先端技術を土台として、LayerXが独自で開発した複数のアルゴリズムから構成される。このアルゴリズムの中から顧客のニーズや用途に沿ったものを基盤として、顧客のサービス開発に伴走する仕組みだ。

Anonifyの土台となる技術
 

プライバシーデータ領域におけるイネーブラーへ 

主な想定顧客は、これからデータを外部に提供する事業を立ち上げる大手企業だ。顧客の視点では、LayerX Anonifyを活用することで自社単体では実現が難しかった新規ビジネスを生み出せる可能性がある。

そのような観点も踏まえ、LayerX代表取締役の福島良典氏は企業のデータ提供やデータ販売を裏側で支える「イネーブラー(他社ビジネスの支援基盤企業)」のような役割を担っていきたいという。
 
「たとえば(イトーヨーカ堂などが導入するEC立ち上げプラットフォームを手がける)10X社は顧客のネットスーパーの立ち上げをイネーブラーとして支えていますが、
Anonifyはそのプライバシーデータ版のようなイメージです。企業間や産業間を超えてデータの利活用ができるサービスを立ち上げるとなると、プライバシー情報の加工や、データをやり取りする際のチェックなど膨大なコストが発生する。それをものすごく簡単にするサービスという位置付けです」