将来の売上を売却、成長資金を素早く調達

従来スタートアップの資金調達手段としてはエクイティとデットが主流となってきたが、RBFは双方の“ハイブリッド”と言われることが多い。

エクイティとは異なり株式が希薄化することはなく、デットのように個人保証や担保を求められるようなこともない。サービスによって多少の違いはあるものの、RBF型のサービスは財務データや決済データなどを連携することですぐに審査を始められるものも多く、オンライン上でスピーディーに資金を集められる点も特徴だ。

もちろん一定の制約も存在する。過去の売上データを基に将来の収益を予測するため、一定の売上が積み上がった状態でなければ調達できる資金が少なくなりやすい。調達コスト(手数料)もデットに比べると高い傾向にある。

Yoii Fuelでは過去の売上実績や財務情報から将来の売上を予測し、その売上を買い取るかたちで企業に資金を提供している。

顧客企業にとっては事業成長において重要なタイミングにおいて、必要な資金をスピーディーに調達できるのが特徴。freeeやStripeといった会計ツール、決済ツールなどとデータを連携することで審査に必要なデータを手間なく揃えられ、審査から6営業日で資金調達が完了する。

調達額に数%〜十数%程度の手数料率(企業の状況などによって異なる)をかけた金額がYoiiの収益となる仕組み。顧客は売上の増減に関わらず毎月一定額を支払う。

宇野氏によるとこれまでSaaS企業やD2C、EC系の企業などを中心に数十社にサービスを提供してきた。調達額は基本的に1社あたり数千万円程度。SaaS企業ではブリッジファイナンスの手段として、D2C・EC系の企業では事業成長に向けた広告宣伝費や仕入れ資金を調達する手段として使われることが多い。

また直近数カ月に関してはスタートアップの資金調達環境の変化に伴い、ランウェイ(キャッシュが尽きるまでの期間)を伸ばして企業価値を少しでも上げる目的での調達ニーズが増えているという。

海外で先行するRBF、100億円以上を集めた企業も10社以上

Yoiiで代表取締役CEOを務める宇野雅晴氏
Yoiiで代表取締役CEOを務める宇野雅晴氏

Yoiiは2021年の設立。RBFの領域で事業を立ち上げた背景には、宇野氏自身が過去に勤めていたスタートアップで会計業務を経験し、その際にスタートアップにおける資金繰りやキャッシュフローの重要性を感じたことも大きく影響しているという。

事業領域を検討している際にRBFの代表的なプレーヤーであるCapchaseを知り、日本でもRBFを実現できればニーズがあるのではないかと考えた。サービス立ち上げ前には20〜30社程度にヒアリングを実施し、資金調達に関する課題やRBFへのニーズを確認。2021年4月にクローズドベータ版をローンチし、機能改善を続けてきた。