一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)が2022年4月に発表したデータによると、4K(または8K)テレビを所有している人は19.6%と、2割にも満たない。

4K解像度(水平3840×垂直2160画素)は2K解像度(水平1920×垂直1080画素)に比べてドット数が4倍あるため、美しいことは間違いない。しかし小さな画面サイズではドットが細かくなり過ぎてしまうのである。筆者の体感では、40型を下回るサイズでは4Kと2Kの区別が難しい。40型よりも小さな画面で4K解像度のテレビやディスプレイを選んでも、高解像度の恩恵を受けづらい。

ソフトメーカーが演出した、ソフトの「プレミア感」

前述したように、ハードとしての魅力を一般ユーザーには伝えきれていないPS5。そんな状況を変えるゲームチェンジャーとも呼べるソフトがホグワーツ・レガシーだ。

このソフトはハリー・ポッターの公式ゲームであるにも関わらず、作品内に登場する学校名(地名)をタイトルに採用するという大英断をした。しかも、(市場にあまり出回っていない)最新ゲーム機とPC向けにのみ出すという、大胆な販売戦略。

本サイトの過去記事「二極化を続けるゲーム産業」でも説明したが、ゲームのグラフィックが緻密さを増すほどグラフィック作成者の人件費が高騰し、損益分岐点は高くなるばかり。そこで発売元の多くはPS4/5だけでなくXboxやPCも含めた現行のゲーム機すべてで同じソフトを発売し、売上を少しでも増やそうとしている。その代わり、PS4版とPS5版を同時に制作することで、PS5ならではの「違い」がほとんど出せなくなっている。

ちなみにホグワーツ・レガシーも、2月にはPS5とXbox Series X|S、PCの3機種を先行発売したが、4月4日には前世代機のPS4とXbox One版を、そして7月25日には販売台数がもっとも多いNintendo Switchでも発売するという、機種別の段階的な発売日設定を行っている。

発売元がこうした販売スケジュールを選んだ理由はおそらく、最高峰のグラフィックを体験できるハードウェアで最初に発売することで動画などがYouTubeやSNSに投稿され、マジョリティである「PS5を持っていないユーザー」から羨望の眼差しを受けるとにらんだからだろう。PS5を持っていないユーザーは「2カ月待てば自分の自宅でも遊べる」という期待を抱き、発売日を待つ。高精細な画面がセールスポイントだとは言え、グラフィックの品質がPS5版に比べて落ちたとしても非難する声は皆無だろう。