さらに、現在もっとも普及しているプラットフォームであるNintendo Switch版は、PS4版からさらに後の7月に発売する。こちらもグラフィックの品質ダウンをネガティブには受け止められないだろう。これはホグワーツ・レガシーが大ヒット&ロングテールを見込める作品だったからこそ使えた手法であり、知名度の低いゲームソフトで同じことをしても、同様の効果は期待できない。

しかしこの「PS5先行発売」は業界にとっては大きな功績になるだろう。PS5を持っていれば、PS4ユーザーよりも「2カ月前にゲームが遊べる」だけでなく、「より美しいグラフィックでゲームを遊べる」という事実を作ることができたからだ。たとえPS4版が発売されたあとでも、「PS5であれば、現状最高峰のグラフィックで遊べる」という優越感は残る。

これはあくまでソフトの発売元の販売戦略ではあるが、結果的にPS5本体の訴求力を引き出す効果があったことは間違いない。

「欲しければ買える」状態になったPS5の未来を変える『FF16』

北米のブラックフライデーが終了した2022年末からは日本国内でもPS5本体の出荷量が大幅に増え、メーカー希望小売価格で買える機会が増えつつある。そのため、「PS5でしか遊べないタイトル」があればPS5を売り伸ばすチャンスとなる。

2月16日に発売したElectronic Arts の『WILD HEARTS』も、ホグワーツ・レガシーと同様にPS5とXbox Series X|S、そしてPCのみでの発売となった。こちらは他機種での発売予定はないため、日本の家庭用ゲーム機ファンにとっては「PS5または高性能ゲーミングPCでのみ遊べるゲーム」という受け止められ方をしている。つまり、このタイトルも「PS5を買ったこと」で得られる優越感を味わえるものの1つだ。

こうしたタイトルが今後増えていけば、PS4ユーザーの中にPS5への買い替えを検討しようとする人が増えていくのは間違いないし、PS5の発売元であるSIEも、こうした状況になることを切望しているに違いない。

そんなタイミングで2023年6月22日に発売されるスクウェア・エニックスの大型タイトル『ファイナルファンタジーXVI(FF16)』は、PS5“専用”タイトルだ。他機種どころか、PC版の発売予定すら発表されていない。

『ファイナルファンタジーXVI』公式サイトのスクリーンショット
『ファイナルファンタジーXVI』公式サイトのスクリーンショット

日本どころか世界レベルで最先端グラフィックを期待されている同作は、PS5を買わないとプレイできない。つまりSIEにとってPS5の今後を左右するだけのゲームチェンジャー的なソフトとして捉えているであろうことは想像にたやすい。