キャンベル氏は2007年にカリフォルニアでGoogleに入社し、2013年に来日。2010年からGoogle Japanに参画していた川口氏とともに「Google マップ」モバイル版などの開発に携わった。
Googleは言わずと知れたグローバルIT企業だ。Google マップチームも日本と本社のある米・カリフォルニア州のマウンテンビュー、ニューヨーク、ロンドン、シドニー、スイスなど、世界中に分散していた。「離れた場所を常時接続でつなげて、2つのチームが一緒に働ける環境をつくる試みは何度もありました」と川口氏は言う。
「四半期に1度はマウンテンビューで会おうということになっていました。それがないとチームがまとまらず、マネジャー間の信頼が薄れるからです。違うオフィスで同じようなプロジェクトが立ち上がってバッティングするようなことは何度も起きていました。しかし、そういう問題を解決するのに、飛行機に毎度乗って移動することには、そろそろ飽きていたのです」(川口氏)
だが、Google ハングアウトをつなげっ放しにしたり、それぞれのオフィスのハドルスペース(軽い打ち合わせ用のスペース)を常時接続したりといろいろと試したが、問題は解決しなかったという。
キャンベル氏もキャンベル氏で、仕事における心理的・物理的距離を縮めることのほか、自分が帰属するコミュニティや家族とのつながりを維持するためにも、常に世界中を移動する生活を送っていた。
3年半、同じチームで働いた後、キャンベル氏は「新しいことを始めないか」と川口氏を誘った。2人が参加したクリエイティブコミュニティ「Straylight(ストレイライト)」でのエンジニア、クリエイターとの出会いも彼らに影響を与えた。
「私には3人の子どもがいるのですが、子どもたちと東京に住み続けるのはサステナブルではないなと、ちょうど思い始めた頃でもありました。自分がつながっていたい、エンジニアやクリエイターのプロフェッショナルコミュニティは東京にあるけれども、いるべき場所は海外や郊外にある。そこで、どうやってこのネットワークや人とのつながりを維持するか、真剣に考えるようになりました」(川口氏)
2017年4月、キャンベル氏からtonariの原型となるアイデアが出る。川口氏が解きたい問題とキャンベル氏が解きたい問題がちょうど合致したことから、プロジェクトがスタートした。