普及が加速するEVを再生エネルギーで走らせる、それも大きな発電所で作ったエネルギーではなく屋根の上で作ったものを充電する仕組みを通じて、電気と交通を一気に脱炭素化させる──。そんなアイデアがYanekaraの原点にあるという。

2019年、まずは学生の研究開発プロジェクトというかたちでチームが始動。考案した「太陽光によるEV充電システム」の構想は、東京大学アントレプレナー道場のビジネスコンテストにおいて優秀賞も獲得した。

その後は本郷テックガレージを拠点にプロトタイプの開発に着手。2020年に未踏アドバンスト事業、2021年に東大IPC(東京大学協創プラットフォーム開発)のインキュベーションプログラムへ採択されるなど、さまざまなサポートも受けながら開発を続けてきた。

2020年に福岡で実施した実証実験ではEVが2回故障するなど課題も多く見つかったが、現在はそこで得られた知見も踏まえて改良版の開発に取り組む。今後の実証実験や量産への準備に向けて開発体制を強化するべく、東大IPC、ディープコア、エンジェル投資家などから5500万円の資金調達も実施した。

リソースの限られる少人数のスタートアップがハードウェアとクラウドシステムを並行で開発していくことは、決して簡単ではない。

加えてエネルギー業界が大きなプレーヤーによってルール作りが進んでいく構造になっているほか、新しい技術が社会全体に実装されるまでの時間がかかることもあって「大変なことも多く、難しい戦いであることは間違いないです」と吉岡氏は話す。

それでも「屋根から自然エネルギー100%の未来を創る」ことができれば、自分たちの理想とする社会の実現にもつながる。若い起業家たちによる挑戦はまだ始まったばかりだ。