この分野では日本のStartbahn社が、先進的な取り組みで注目を集めています。同社はデジタルアート作品の来歴を管理することのできるブロックチェーン基盤や、それを利用したアート作品の売買プラットフォームを開発しています。作品の所有権はブロックチェーン上で記録され、過去にどのような所有者にいくらで売買されてきたのかといった来歴を証明できるようになります。すでに米国やシンガポールに拠点を構え、各地のアートギャラリーやオークションハウスとの連携を強化しています。

海外でもロサンゼルスのVerisart(ベリサート)は、それぞれのアート作品に関する所有者や所在地、信頼性などの情報をブロックチェーン上に記録し、所有権証書の管理プラットフォームを構築するプロジェクトを進めています。またロンドンのBlockverify(ブロックベリファイ)は、アート作品の追跡や、模造品、盗難品の識別を簡素化するシステムを、ブロックチェーン上に構築しています。

LVMHもブロックチェーン技術による流通情報基盤を開発

贋作・偽物が出回るのはアートだけに限りません。ブランド品や宝飾品もアートと同様に真贋管理の問題を抱えています。

OECD(経済協力開発機構)の調査によると偽造品・海賊版の流通総額は、およそ4兆5000億ドルと推定されています。そのうち高級時計やバッグなどのラグジュアリー製品は、医薬品や娯楽製品をしのぐ6割から7割を占め、1兆2000億ドルと推定されるラグジュアリー製品の全取引額の4分の1ほどを占めると見られています。

こうした背景を受け、特に被害規模の大きいブランドは対応に多額の費用を投じています。ルイ・ヴィトン、シャネル、クリスチャンディオール、タグ・ホイヤー、モエ・エ・シャンドンなど75もの高級ブランドを有する巨大グループ「LVMH」は、60人以上の弁護士を雇い、コピー商品に対する法的措置に、年間1700万ドル費やしているといわれています。

偽造品の流通は、C2C取引の普及によって増加を続けているとされ、匿名をいいことに、約4割近くがインターネット上で売買されているとの調査結果もあります。

『超入門ブロックチェーン』
森川夢佑斗著『超入門ブロックチェーン』(発行:エムディエヌコーポレーション/発売:インプレス)

LVMHは、この問題を根治するためブロックチェーン技術を利用した流通情報基盤「AURA」を開発しています。AURAでは、原材料の調達から店頭に並ぶまでの一連の情報を記録し、保全しています。

また、実際に商品を手に取る消費者もブランドのアプリを用いてQRコードやスマートタグを読み取ることで、その商品が本物かどうかを確認することができるようになります。