ROOV内では360°写真などと異なり、部屋の中を行き来することで実際の内覧に近い体験が可能。部屋の間取りや寸法を確かめられるだけでなく、家具を設置したり色を変えたりといったように豊富なシミュレーション機能も搭載している。

ROOVのVR内覧機能
ROOV上での内覧の様子。実際に家具などを設置しながらシミュレーションすることが可能だ

VR内覧の仕組み自体は以前から存在していたが、モデルルームの接客ブースにスペックの高いPCやVRデバイスを置き、そこで使ってもらうことも多かった。ROOVの場合は現地で営業担当者が説明をする際はもちろん、ユーザーに自宅で検討してもらう際にも使える。スタイルポート代表取締役の間所暁彦氏によると、8割ほどのユーザーは家に帰ったあとで再びROOVを使って細かくリサーチをするそうだ。

導入企業はROOVにすべてのプレゼン資料を集約することで、対面でもオンラインでも同じように接客することができる。「どの情報をどのくらい閲覧したのか」といった顧客の行動を解析する仕組みも備わっているため、ニーズに合った提案をしやすい。

顧客の検討状況をデータで見える化することができるため、それを踏まえて提案内容を変えることも可能だ
顧客の検討状況をデータで見える化することができるため、それを踏まえて提案内容を変えることも可能だ

「今までのVR内覧は(物件の情報を)良く見せるという文脈が大きく、いかに画質を向上させるかなどに軸が置かれがちでした。一方で私たちはどちらかと言えば業務支援という文脈の方が強い。空間の情報をオンラインで相手に伝えるのが難しかった中で、VR内覧を中心にそのコミュニケーションを支援しています」

「もちろんモデルルームでも商談はするけれど、ROOVを使うことで顧客は自宅でも物件の情報を細かく調べることができ、企業は顧客が何に興味を持っているのかを知ることができる。つまり商談をモデルルームの外にも延長できるんです」(間所氏)

当初は在京の大手デベロッパーの首都圏でのプロジェクトで活用されることが多かったが、直近では北海道から九州まで地方のデベロッパーでの導入も進んでいる。ROOVが活用されるプロジェクトは常時入れ替わるものの、約8割のプロジェクトは既存ユーザーのリピート案件か、同じデベロッパー内での別部門での利用なのだという。

スタイルポート代表取締役の間所暁彦氏
スタイルポート代表取締役の間所暁彦氏。ビジネススクール時代に同じゼミで親交の合った中條氏と共同で会社を立ち上げた

スタイルポートは分譲マンションの開発や不動産投資ファンドの組成などに携わってきた不動産業界出身の間所氏と、リクルートやエムスリーなどで事業開発を経験してきた中條宰氏が2017年に立ち上げたスタートアップだ。

3DCGデータを標準的なデバイスのブラウザ上でもサクサク動かせる独自エンジンの開発に早くから力を入れ、顧客の声も参考に機能のアップデートを続けてきた。今後は多機能化とともに、戸建て住宅やリフォームなど新たな領域での事業展開も進めていく。