oVice代表取締役 ジョン・セーヒョン氏
oVice代表取締役 ジョン・セーヒョン氏

そうした環境の下、ユーザーが急増したoVice。ジョン氏は「今年4月、5月ぐらいになると、国内では(空間コミュニケーションの分野では)ほぼ競合はいなくなり、どちらかというとトレンドメイキングする立場になった感がある」と述べている。

8月には約1000人のユーザーを集め、負荷テストなども兼ねたオンラインイベント「oVice Summit」を開催。3万円の豪華料理を楽しむバーチャル宴会や、ゲーム、クイズ大会などを実施することで、コアなファンの獲得につながったという。

オフィスとして、またイベント会場としての用途で、これまでに発行したスペースは累積1万件を突破した。そのうちの約7割が口コミによる紹介で利用開始したユーザーだという。

企業によっては複数のスペースを発行して、ビルのように活用するところもあるそうで、ビル数は現在155棟、平均階層数は3階。最も階層の多いところでは36階を利用する企業もある。oViceで毎日働く人の数は約3万人で、これは六本木ヒルズに出勤する人の数とほぼ同じだそうだ。

月次収益は先述したとおりだが、ARR(年次経常収益)もサービス公開から約8カ月の2021年4月には1億円を達成。さらに、そこから3カ月で2億円を突破し、現在では2億7000万円を超えた。サービス継続率は98%を維持しているという。

リアルとオンラインのハイブリッド勤務を見据えた開発・連携を強化

oViceでは以前から、ポストコロナ時代のハイブリッド勤務体系への移行を見据えて、オフラインのオフィスに設置するハードウェアの開発を進めていた。最近ではリコーの360°カメラを使ったストリーミングサービスとの連携により、oViceにリアル空間の映像をリアルタイムで配信できる機能をベータ版として実装。両社で検証を進め、ソリューションとしての提供を目指しているところだ。

また、oViceが本社を置く石川県七尾市では、テーブルに置かれた実在のカメラとスピーカーに近づくと、オンラインのoVice上にその姿が映り、逆にオンラインでそのテーブルを示すオブジェクトにアバターを近づけて話しかけると、その声がリアルオフィスでも聞こえる、といった試みも行われている。同じスペースには、会議室として使える段ボール製の「簡易会議スペース」なども設置されている。

七尾市のoVice本社の様子
七尾市のoVice本社の様子。左の壁にはプロジェクターでバーチャルオフィスが投影され、右奥に簡易会議スペースが設置されている

「コロナ以前から会議室は足りていないオフィスは多かったはず。みんながオフィスに戻ってくれば、それがさらに足りなくなる可能性があります。なぜなら、みんな外出しなくてもオンラインで成り立つ会議もあると知ってしまったからです。するとオフィスで参加する会議では、ノイズがひどくなってしまう。そこでオフィスに置けて、オンライン会議に参加する人が入って使えるようなコンパクトなスペースをテストしています。段ボールなので防音性はそこそこですが、角が多いので集音位置を高く設定でき、ノイズが相手にはそれほど聞こえないという仕組みになっています」(ジョン氏)