さらに米Bird Ridesは、2021年10月にGPSや複数のセンサーを組み合わせ、数センチという高い精度で動作する歩道走行防止技術を発表。ライダーが歩道に侵入すると、自動的に停止させ、歩いて車道に戻ることを促すという。こうした最先端のテクノロジーを持つのが、BIRDの強みだ。

目指すは「新たな時代の公共交通」

向かって左の電動キックボードは国内走行向けにバックミラーやウインカーなどの保安部品を取り付けたプロトタイプ
向かって左の電動キックボードは国内走行向けにバックミラーやウインカーなどの保安部品を取り付けたプロトタイプ
実証実験中は農耕機械やトラクターなどと同じ「小型特殊車両」として運用予定。ヘルメット着用は任意となる
実証実験中は農耕機械やトラクターなどと同じ「小型特殊車両」として運用予定。ヘルメット着用は任意となる

宮内氏は、もともと長距離トラックのドライバーをしていたという異色の経歴を持つ。その後、大手物流会社のセンコーに入社し、運送や倉庫、流通、通関などを経験した。企画開発や事業開発を経て、33歳のとき「物流の力を使ってライフサポートをしたい」と起業。買い物代行サービスや、日常生活の困りごとを解決する家事代行サービスなどに挑戦した。

だがライフサポート事業を手がける中で、「結局、一番のペインポイント(顧客の悩みの種)はラストワンマイルだ」と気づく。そこで、「いずれは人の移動や、それに伴うモノの移動を手がけたい、と考えていた」と宮内氏は振り返る。そんなときにシンガポールで目にしたのが、電動キックボードだった。「このすばらしい乗りものを、ぜひ日本に導入したい」と動き出した。

数あるプラットフォームの中から宮内氏が目を付けたのがBIRDだ。電動キックボードシェアリングサービスのパイオニアであり、ライド数や資金調達額、時価総額も世界でナンバーワン。約1年かけて米Bird Ridesと交渉し、国内展開のライセンス契約を得た。

「電動キックボードを普及させるのは第1章。第2章では、それを誰にどう使ってもらうかを考えたい」と宮内氏。例えば、フードデリバリーなどの配達や家事代行、訪問介護ヘルパーなど、ラストワンマイルの移動を必要とする仕事はたくさんある。もちろん生活のための移動手段が必要な人も数多くいる。「そういった方々にマイクロモビリティによる移動を提供し、地域を活性化していきたい」と宮内氏は意気込む。そのために、電動キックボードだけでなく、3輪や4輪のモビリティの展開も視野に入れている。

2020年12月に発足したBRJは、2021年9月にシードラウンドとしてB Dash Venturesやフューチャーベンチャーキャピタルなどから4億円を調達。まずは埼玉県所沢市、さいたま市、千葉県野田市、千葉市など、関東エリアにある人口30万人規模の都市に照準を絞って展開を進める。それが軌道に乗れば5年後には、全国の都市で2万台規模を展開し、地域に根付く新たな時代の公共交通を目指す。