『Voice of Cards ドラゴンの島』トレーラー

ゲーム業界の将来を担う低予算ゲームは、Steamで育まれる?

皆さんは最近、マイニンテンドーストアやPlayStation Storeで、新発売のゲームソフト一覧ページをご覧になられたことがあるだろうか。こちらからSwitchの新作ソフト一覧画面を確認してほしい。

ダウンロード専用ソフトが並ぶマイニンテンドーストア
ダウンロード専用ソフトが並ぶマイニンテンドーストア (拡大画像)

おそらく、新作ソフトの多くはゲームファンであっても初めて見るものが多いはず。それもそのはず、新作ソフトとして並んでいるタイトルのうちパッケージ版が発売されているソフトは、わずか1割程度。実は9割のタイトルは、ダウンロード専売ソフトとなっている。

これらダウンロード専売タイトルのほとんどは3DCGを使わない、または使っていてもできるだけ低予算・少人数で作られたインディーゲームが中心。本業で生計を立てながら趣味でゲームを作っている人もいるくらいなので、大手ゲームメーカーが作るタイトルに比べて採算分岐点は極端に下がる。

ここまでインディーゲームが増えた背景には、「Steam」というプラットフォームの存在が大きく貢献している。本サイトの過去記事「世界的ヒット『モンハン』のカプコンも急ぎかじを切る、PCゲームビジネスの破壊力」で紹介したPCゲームのプラットフォームのSteamには、こうしたインディーの新作ゲームが次々と発売されている。

Steamの大きな特徴は早期アクセス(アーリーアクセス)という「慣習」だ。

早期アクセスとは「開発途中バージョンだけれども、まずはプレーして、ユーザーの皆さんの声を聞かせて欲しい」というスタンスで、ベータ版程度の完成度のゲームを先行して発売する仕組みだ。

製品版として発売したソフトに不具合などがあればネット上で炎上騒ぎになるが、早期アクセス版ならばユーザーもデバッグに協力する感覚で、バグ報告やバランス調整の提案などをポジティブに行ってくれる。これにより、プロのデバッガーを雇えないような個人開発者でもバグの修正が容易になるというわけだ。

開発者にとっての早期アクセス版のメリットはバグやバランス調整だけではない。ある意味ではクラウドファンディングのような開発資金の調達も可能だ。だがもちろん、“うまみ”だけではない、シビアな側面もある。ゲームの内容に共感する人が少なく、支持が得られない場合は、ゲームの開発が進められないという可能性もある。

しかし、早期アクセスで評判になれば収入面やデバッグの充実はもちろん、ネット上での知名度も飛躍的に上がっていく。低予算で作っているゲームなので、ネット上でポジティブな評判が広がっていくことは、お金には代えられない宣伝効果を発揮する。テストマーケティングに加えて、プリプロモーションも兼ねているのだ。