特に、最近は汎用の開発ツール「Unreal Engine」で作るゲームが増えている。このためSteam用として作ったゲームも、比較的容易にSwitchやPS4/5などへ移植できる。Steamですでに高い評価を得たタイトルは、家庭用ゲーム機向けに発売しても勝機があるというわけだ。

まさに、このパターンで11月24日に発売されたばかりなのが『ごく普通の鹿のゲーム DEEEER Simulator』だ。Steamの製品版はSwitchやPS4、Xbox Series X|Sの製品版と同時リリースとなった。それどころか、SwitchとPS4ではパッケージ版も発売されたほどである。

『ごく普通の鹿のゲーム DEEEER Simulator』

過去に制作実績がなく、初めて作ったタイトルだとしても大ヒットすれば、一気にヒットゲームメーカーの仲間入りができる。そんなアメリカンドリームのような環境が整いつつあるのが、今のゲーム業界と言えよう。

映画業界と同様に二極化していくゲーム業界

ゲーム業界の行く末は、かつて映画業界が歩んだ道に似ていると言われることが多い。

かつて一番の娯楽メディアだった映画は、無料で観られるテレビに駆逐された。このため、現在は全世界で公開される大予算のハリウッド映画やディズニー、ジブリのような作品群が中心になっている。

一方で、低予算ながら意欲作を作り、スマッシュヒットを狙う作品も増え、二極化が進んできた。現在のゲームも『FF』シリーズのようなAAA(トリプルエー)タイトルと、低予算(インディー)ゲームに二極化されつつある。

今回の記事冒頭で紹介したような、スクウェア・エニックスが自社ブランドを使ってインディーゲームを発売したのは、こうした「いまどきの」ユーザーニーズに対応した動きだと私は解釈している。

ダウンロード専売タイトルはパッケージ版ソフトとは異なり、外部の調査会社では購入本数を把握できない。このため、今回の施策が成功したのかどうかは、次回のスクウェア・エニックス決算発表を待たなくてはいけない。しかし今回の成功の可否に関係なく、ゲームメーカーはSteamをはじめとする新しいビジネスモデルへの移行を強いられている、苦しい時期にあることだけは間違いない。