そして、日本はその開発のネックとなる重要な技術を保有しているのです。私はその技術を保有する会社を中心に、巨額の開発費を投じ、私自身の悲願である核廃絶の実現への速度を一気に早め、『ケントウシ』という綽名を返上したいと決意したのです」

岸田首相の発言に
海外メディアが大注目する理由

 さて、実際にこのような演説が行われるとしたら、どんな反応が起きるでしょうか。

 軍事問題に弱い日本の新聞記者たちはボーゼンとなって、「これは誰の入れ知恵か?安倍離れのための策略か?」など、お得意の政局話しにしようと考え込むでしょうが、海外の記者たちの反応はまったく違います。

 もし岸田氏が言うレーザー兵器が完成し、核ミサイルも巡航ミサイルも、もしかすると普通の砲弾でさえ簡単に打ち落とせる兵器が完成すれば、これは世界を変える軍事的出来事です。

 かつて米国が核爆弾をつくり世界を完全に制覇したことや、英国が通称弩級戦艦、ドレッドノート型戦艦をつくって列強の戦艦を一夜にして二流にしてしまったのと同様に、少なくとも数年の間、国際政治を日本が圧倒的にリードする世の中が実現するからです。まさに日本がゲームチェンジャーになる可能性を秘めた演説を、目の前の冴えないリーダーがやっているのだから、驚かないはずはありません。

 しかし、レーザー兵器といっても、どんなものを日本は作ろうとしているのか、岸田氏がこれを詳細に話すわけはありません。演説終了とともに、各国の専門家の現状分析と推測が始まります。もちろん、各国も開発には着手しているため、一部の性能はわかりますが、かなり厳しい軍事機密のベールに覆われた世界です。

 元陸上自衛隊第一師団長の矢野義昭氏の論文によると、一般にレーザー兵器(専門的には指向性エネルギー兵器)と呼ばれるものには3種類あります。

 第一は、高出力レーザーで、すでに工業用では溶接・切断などに使われています。しかし、軍用に使う場合は 大気中の雲や屑にも反応して、その度にエネルギーが減っていき、遠距離の物体まで破壊する状態には進歩していません。また、相当な電力を必要とするのもネックです。とはいえ米国は、100kW級の電力を使用して、実験では数キロ以内の無人機や小型ボートなどを無力化できる段階になっています。

 第二のレーザー兵器は電磁パルス兵器です。現在のレーダーの出力を倍加しつつ、そのエネルギーを電子的に操作して、弾道ミサイルの弾頭部に集中することにより、内部の電子部品などの性能を破壊し、機能を麻痺させてしまいます。実は、日本は電磁パルスについては、先進的な技術力を持っています(高空で原爆を爆発させ、通信網を破壊する電磁パルス兵器は核爆弾なので、一応除外します)。