「第二次日露戦争」を予言する隠れた名著、そのとき日本で起きる驚愕の事態神奈川県横須賀市の東郷平八郎像と記念艦三笠。日露戦争の象徴的な存在だ Photo:PIXTA

軍事を全く知らない日本人
ウクライナ戦争は他人事か?

 作家の司馬遼太郎氏は、太平洋戦争における日本の敗因として「日本の知識人の教養に、軍事知識という課目がなかった」ことを挙げています。ウクライナ戦争が混迷を極め、台湾有事が叫ばれる現代においても、情報番組やニュースを見るにつけ、日本人は軍事をまったく知らないことがわかります。かつてなく軍事への関心が高まっている今、軍事の本質とロシアによる日本侵攻の可能性を同時に理解することができる、隠れた名著を紹介しましょう。

 ウクライナ戦争が始まって以来、毎日の戦況はメディアで刻々と報告されています。しかし10年も前に、ロシアの「日本侵攻」が起こり得たという内容の本が出版されていたことは、ほとんど知られていません。

 その本のタイトルは『第二次日露戦争―失われた国土を取り戻す戦い』 (光人社NF文庫)。著者は中村秀樹氏。海上自衛隊の潜水艦において米国でも有名なエース艦長です。さすが現場に身を置いていただけあって、実際の戦争を熟知しており、極めて具体的に日本の危機管理の課題を教えられました。

 しかし10年前に『第二次日露戦争』が出たときは、私もさすがに「今さら、日露戦争など起きないだろう」と考え、著書は長らく本棚の奥に眠っていました。そして、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに読み返してみて、仰天したのです。

 それは、ウクライナにおけるロシア戦い方と『第二次日露戦争』でのロシアの戦い方があまりにそっくりで、まるで「予言書」のようだったからです。

 まず、第二次日露戦争が起こる前提を、本から紹介してみます。もちろんロシアは、日本のことをウクライナのように「本来はロシアの領土」などとは認識していません。しかし、ロシアが米国と全面核戦争になることを前提に戦略を考えれば、日本は地政学上極めて重要な位置にあります。

 ご存じのように核抑止力とは、一方が先制攻撃で核爆弾を相手の本国に落とし、本土が壊滅状態になったとしても、海に潜んだ相手国の原子力潜水艦や空の爆撃機から報復の核ミサイルが発射され、双方が壊滅する……だから、お互い核を持っていても使わないし、使えない、という考え方です。つまり、原子力潜水艦による反撃は極めて重要な役割を担っています。