一冊の「お金」の本が世界的に注目を集めている。『The Psychology of Money(サイコロジー・オブ・マネー)』だ。ビジネス、投資、資産形成に効く教訓を「人間心理」の側面から教える、これまでにない一冊である。世界43ヵ国で刊行され、世界的ベストセラーとなった本書は、ウォールストリートジャーナルから「ここ数年で最高かつ、もっとも独創的なお金の本」と高い評価を受け、Amazon.comでもすでに1万件以上の評価が集まっている。今回は、本書の内容をイラストと共に紹介する。(イラスト©野田映美)

1900年から2019年まで、毎月1ドルずつ貯金したとする。そのお金を、どのように投資するのが有効だろうか。
この1ドルを、上げ相場だろうが下げ相場だろうが、とにかく毎月、米国の株式市場に投資するとしよう。経済学者が、迫り来る不況や新たな下げ相場について声高に警告していても関係ない。ただ投資を続ける。この方法で投資する人を「スー」と呼ぶ。
しかし、景気後退時に投資するのは怖いと考える人もいるだろう。その場合、毎月1ドルを株式市場に投資し、景気が後退したら株式を売却して毎月1ドルを現金で貯金する。そして景気後退が終わったらその貯金をすべて株式市場に投資する。この投資家を「ジム」と呼ぼう。
または、景気後退に怖気づき、市場に復帰するまでに数ヵ月かかる人もいるかもしれない。この場合、基本的に毎月1ドルを株式に投資するが、景気後退になったら6ヵ月後に株式を売却し、景気後退が終わって6ヵ月したら投資を再開する。この投資家は「トム」と呼ぶ。
この3人の投資家は、1900年から2019年までのあいだに、どれくらいの資産を築けるだろうか? 答えは以下の通り、圧倒的にスーの勝ちだ。
1900年から2019年のあいだには1428ヵ月間がある。そのうち300ヵ月が景気後退の期間だった。つまり、スーは景気が後退していた、あるいは後退しかけていた全体の21%のあいだに冷静さを保って投資を続けたことで、ジムやトムよりも4分の3近く多くの資産を築くことができたのだ。
天才的な投資家の定義。それは「周りの人たちが我を忘れているときに、当たり前の行動をとれる人」なのである。

(本原稿は、モーガン・ハウセル著、児島修訳『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』をマンガ化したものです)