著名シェフと意気投合、出会って2ヵ月で法人設立

 ピザのレシピは、共同代表の奥野氏が考案した。これまで、ミシュランガイドのビブグルマンに3年連続で選ばれたイタリア料理店をはじめ、複数の飲食店を経営する奥野氏。2人は共通の知人を介して出会ったが、「“食”の分野をITでより効率化することで、料理人や店舗スタッフが本来取り組むべき作業に集中できるのではないか」という話をしてすぐに意気投合。たまたま条件に合う物件が見つかったこともあって、知り合って2ヵ月後にはイタダキを共同で創業した。

SONOBONで提供する低糖質ピザ(写真提供:イタダキ)SONOBONで提供する低糖質ピザ(写真提供:イタダキ)

 店舗の効率化はITの導入だけではない。SONOBONのピザ生地やレシピは奥野氏のオリジナルだが、生地の焼き上げに関しては外部の工場に委託。店舗では具材の盛り付けや仕上げのみに徹することで、従業員の経験に依存せず、品質を担保することを選んだ。

「前提として、料理人もビジネスパーソンであると考えています。料理人もリソースや予算を最適配分する必要があります。そう考えて、今回はビール小麦の仕入れルート開発、および配合を考案し、その後の焼き上げる過程はOEMとして外注する選択をしました」(奥野氏)

「重要なのは奥野さんのクリエイティビティです。彼の作る“おいしい”を平準化して、誰もが調理から提供までの作業をできるようにすれば、新たな価値が生まれると考えています。ですが大事なのは“インターネット村から来た侵略者”にならないこと。(強引にITで働き方を変えるのではなく)本来その人がやらなくてもいい仕事を平準化して、その人でないとできない仕事に注力できるようにしたいんです」(松本氏)

 SONOBONの売り上げ目標については「まだ未定」と語るにとどまったが、将来的にはチェーン展開についても視野に入れる。IT化や平準化はそのための布石でもあるという。

 また松本氏はイタダキと並行して株式会社カンカクを設立。東京・北参道に完全キャッシュレスカフェの「KITASANDO COFFEE」をオープンしている。同店では各種決済サービスのほか、専用アプリを使った事前決済にも対応する。また今後は、サブスクリプション(定額制)でのコーヒー販売も計画中だという。ネットとリアルを繋げる松本氏の新たな挑戦は、今まさに始まったばかりだ。