創業当初は市場のニーズがわからず、他社のカメラを研究しましたが、今の市場をつかめてからは、あまり気にしなくなりましたね。現状の製品では解決できていない、消費者の新しいニーズだけを意識しています。

 また、創業時はソフトウェア会社だったので、競合他社とは根本的な発想の仕方が違うように感じます。他社はハードウェアの技術に優れているところが多いので。例えば、同じ手ぶれ補正技術でも、他社はハードウェアで手ぶれ補正をしようとするのに対して、うちはソフトウェアで補正技術を開発します。

――ソフトウェアとハードウェアだと、ソフトウェアの方に注力しているのでしょうか。

 一般のハードウェア会社よりソフトウェア開発技術が高いのが特徴です。ソフトウェアはスピード感があり、アイデアを形にしやすいというのもあります。ハードウェアはコストもかかるし、サプライチェーンの問題もあり、スタートアップだと注力するのが難しいです。

20代で“リコー超え”中国人起業家、次の仕掛けは 「親指サイズのAIカメラ」両手のふさがるスポーツ中でも、自分視点の臨場感ある映像が撮れる(提供:Insta360)

 ただ、ソフトウェアは頭脳であり、ハードウェアは手足だと考えています。どちらも発達しないと長くは走れないので、これから時間とお金をかけて、ソフトウェアだけでなくハードウェアの開発も行っていきたいと思っています。

――今、中国の深センなどを中心に面白いハードウェアが増えているように感じます。気になっている動きや、注目している企業はありますか?

 2014年に設立された、カリフォルニア州にあるSkydio社です。

 AI技術を使って周囲の3Dマップを作成し、障害物を自動で回避するシステムを開発している企業です。静物だけでなく、人や動物の動きも予測し、リアルタイムに回避しながら自律飛行を行うそうです。

 障害物を回避する技術は、少し前までは(データやソフトウェアをネットワークを通じて利用する)クラウドがトレンドでしたが、今は専らAIブームです。この流れに乗って、これから面白いハードウェアが次々に開発されていくでしょう。

――これからも360度カメラで勝負をしていくのでしょうか。

 カメラ業界にこだわりがあるわけではありません。ソフト・ハード関係なく、カメラも関係なく、「生活を動画で簡単にシェアできること」がゴールだと考えています。そのためにどうしたらいいかを常に考えています。

20代で“リコー超え”中国人起業家、次の仕掛けは 「親指サイズのAIカメラ」スポーツシーンでも使える(提供:Insta360)

――今後の展開を教えてください。

 年内に、東京に支社を設ける予定です。米国、中国に次いで、カメラの市場が大きいのは日本です。また、世界有数のカメラメーカーがあり、カメラ好きの消費者も多いので、学べることはたくさんあると思っています。また、カスタマーサポート面も強化していきます。