「この時担当していたのが、Gガイドのライセンスを他社に提供してお金にするライセンスビジネスでした。会社が持つ技術(≒知財)をメタ化したのが特許で、それを広めるのがライセンス。どんな優れた技術もただ存在するだけでは、求められません。ユースケースやサービスを示すことで、その技術で何ができるのかを世界に広めるのがIP戦略です」(田路氏)

 そんな彼が、新天地として選択したのがドローン業界だった。その理由を「知財のノウハウをより生かせるのは、これから発展する新産業。ドローンは20世紀における自動車のように、社会にとって欠かせない存在になる」と説明する。2017年7月、ドローン産業を(IPで)支援するDRONE iPLAB(DiPL)を共同創業。エアロネクストは、その支援先の1つだった。

 4D GRAVITYを発明したのは、バルーン空撮などで高層ビルなどの眺望撮影をしていた鈴木陽一氏(現CTO)。眺望撮影の手段として自作ドローンを使用するうちに、機体の重心制御の重要性に気づきこの技術を思いついた。

「いまも鈴木さんは山梨で技術開発に打ち込んでいます。彼が生み出した形のない資産を、知財としてビジネスにするのが私の役割です。現在、現場で開発を担当するのは数人で、チームのほとんどは各分野のプロフェッショナルで構成し、量産化はパートナーに任せています。一般的にはヒト・モノ・カネを集めるのが経営者の役割だといわれていますが、これらに依存しないで勝負する『無形資産経営』を心掛けています」(田路氏)

中国は「世界へのショーケース」

 今回、エアロネクストは南方科技大学のロボティクス研究院と共同で研究開発ラボ “SUSTECH(SIR)-AERONEXT Flying Robots Technology Shenzhen Lab”を設立。産学連携の拠点として、ドローンの社会実装に向けて活動していく。南方科技大学は約1000人の教授、本科生が約5300人、研究生が約1300人も所属する巨大な大学で、「中国のシリコンバレー」といわれる深センに多数の人材を輩出している。

 エアロネクストでは、以前から中国進出を精力的に進めてきた。深センの国際ピッチ大会「Nanshan “Entrepreneurship Star” Contest 2018」に日本代表として出場し、3位入賞、知的財産賞を果たし、5月に現地法人を設立。また、中国産業ドローンメーカー大手の深セン市科比特航空科技有限公司(MMC)との戦略的提携を発表している。南方科技大学との提携は、同社の技術力に加えてこうした中国での活動があったから実現したものだ。