では、なぜここまで中国進出に意欲的なのか。簡潔に言えば、エアロネクストのIPを効率的に普及させるための戦略だ。

「いま私たちにとって最も必要なのは、『エアロネクストでなければ実現しえなかった』と評価されるようなユースケースです。巨大なドローン市場を持つ中国で通用すれば、一気に世界でも評価されるはず。中国市場を取るためというより、世界へのショーケースとして中国を狙っているといったほうがいいかもしれません」

「また、中国は日本に比べて社会実装のスピードが圧倒的に速い。エンジニアがどんどん新しいことを試して、失敗したら修正してまた挑戦するというサイクルが確立している。こうした土壌と南方科技大学の協力があれば、きっと早いうちに大きなインパクトのある発表ができるはず」(田路氏)

あらゆる機体に標準搭載される、インテルのような存在に

 これからの目標として、「なるべく早くに製品化を実現し、大きな発表をお届けしたい。現状で一番期待しているのは、風の影響を受けやすく、機体が入りづらい場所も多い橋梁の点検ですね」と意気込む田路氏。

 彼は、ドローンがまるで鳥のように飛び回っているのが当たり前な社会が到来すると予想している。その時、エアロネクストはドローンを販売するメーカーではなく、あらゆるドローンのハードウェアの標準的なプラットフォームを担う存在を目指すという。

「自動車のようにドローンが普及すれば、シェアリングや公共交通などの形で所有とは違った形態で使用されるはず。そうしたあらゆる機体に4D GRAVITYが標準搭載されるのが目標です。Intel(インテル)の半導体のように、人々が意識しなくても自然と移動手段として使う存在になっていたいですね」(田路氏)