長期滞在できる車中泊スポットを増やす
しかし、バンライファーたちが不自由なく暮らせる仕組みは、まだ整っていないのが現状だ。
バンライファーの多くは道の駅やサービスエリアを活用しているが、実は法的にはグレーゾーンなのだ。国土交通省の公式ホームページによれば、道の駅は休憩施設のため、駐車場など公共空間で宿泊目的の利用はNGだが、交通事故防止のため24時間無料で利用できる施設でもあるので、「仮眠はOK」としている。
そのため、バンライファーは建前上はあくまで「仮眠」として、道の駅やサービスエリアを利用しているのだ。中には食器類をトイレで洗ったり、駐車場スペースで洗濯物を干したりするなど、一部マナーを守らないバンライファーも問題にもなっている。
「カルチャーの流行が先行していますが、滞在場所や保険制度などの最低限の生活ができるインフラ整備と、バンライフに対する周囲の人々の理解が追いついていません。早く受け皿を作らないと、バンライファーたちが地方に滞在した際にマナーの悪い人間だと誤解されてしまう可能性がある。また、バンライファー自身も、旅の途中で身体も心も落ち着かせることのできる滞在拠点がないと、バンライフ疲れを引き起こしてしまう。きちんとお金を払って、貸す側も借りる側も気持ちよく活用できるスポットを増やしています」(宮下氏)
Carstayは全国各地にある駐車場や土地の持ち主と交渉して、車中泊可能なスポットを増やしている。2020年1月時点で、全国に約140のスポットが存在する。
近くにトイレがあれば車中泊は可能なので、寺院や神社、城など、通常ならば夜は滞在できないような文化財の駐車場にも交渉し、マッチングを実施。また、車中泊スポットと一緒にその地域ならではの体験(ダイビングや洋上パーティー、果物狩りなど)ができるツアーもサイト内に登録されている。
さらに、古民家の駐車場を車中泊スポットにすることで、長期滞在可能な施設をつくる試みも実施している。その最初の施設として、2019年4月に能登半島の奥地・石川県穴水町に住める駐車場「田舎バックパッカーハウス」を開設した。「地方の空き家や空いたスペースを利活用できること、より地域に密接した体験ができることから、「空き家問題や地方創生につながるメリットもある」と宮下氏は説明する。
夫婦バンライファーに聞く車中泊生活の苦楽
実際に、車中泊生活している夫婦バンライファー2組に話を聞いた。
1組目は、昨年10月からバンライフを開始した夫婦ブロガー・ゆうすけさんとちあきさんだ。夫婦ともども勤めていた会社を辞め、トヨタのハイエースで全国を旅しながら、車中泊に関するブログ「ミチトライフ」を運営し生計を立てている。