これだけ聞くと、バンライフは自由で楽しそうだが、リアルな生活は日々の積み重ねであり、もちろん楽しいことばかりではない。
「生活自体が新鮮なのは最初の1カ月くらいで、すぐに慣れてしまいます。毎日必ず、泊まる場所やお風呂を探さないといけないのは、結構大変。また、いくら仲の良い夫婦でも、四六時中一緒にいて逃げ場がないと、しんどくなることもあります。私たちはこの生活を始めてから1年ほど経ちますが、これまで何度も大きな喧嘩をしました。だからこそ、1人になれる時間がすごく大事なので、銭湯に行くとお互い4時間くらいは出てきませんね」(恵利さん)
若者の「車離れ」解消にもつながる
Carstay代表の宮下氏は、若者が続々とバンライフに乗り出すことで「新しい車の需要が生まれるのではないか」と主張する。
「移動手段としての車というよりは、家や秘密基地のような感覚に近い。自分たちで工夫して居心地の良い居住空間に改造するのも面白いので、若い世代の車離れが進む中で、バンライフが一石投じられたらうれしい」(宮下氏)
実際、車を居住空間として考えるトレンドは、数字としても出ている。2019年7月に一般社団法人日本RV協会が発表したキャンピングカー業界の調査では、国内のキャンピングカー保有台数は11万台を超えており、販売総額は年々増加傾向にあるのだ。
時間や場所もとらわれずに、好きな場所で自由に働ける時代だからこそ、都心で働くビジネスマンにとっても、旅をしながら働く生活は遠いものではない。IターンUターンや企業誘致だけでなく、バンライフも地方を盛り上げる1つ切り札になるだろう。