キュア・アップは昨年、ニコチン依存症治療用アプリの治験を終え薬事申請。今年度中の承認を目指している。また、東京大学付属病院と共同開発した非アルコール性脂肪治療用アプリのフェーズ2の臨床試験(患者を対象に、薬の量や使用頻度を測る試験フェーズ)も昨年4月から開始し、高血圧治療用アプリも治験を開始した。これで世界的な医学ジャーナル誌ランセットに掲載された日本の成人死亡要因の1位である喫煙と2位の高血圧の治療用アプリを開発したことになる。

医学的エビデンスと技術という両軸の強み

 富士経済が昨年2月に発表した「ヘルステック&健康ソリューション関連市場の現状と将来展望2019」によれば、2022年のヘルステック・健康ソリューションソリューション関連の国内市場は3083億円と2017年から50%アップすると予想されている。

 現状の国内ヘルステック関連のスタートアップを見ると、健康支援をサービスの中心に据えるスタートアップが多額の調達を果たしているほか、AIを利用した検査や遺伝子検査など技術に特化したスタートアップが注目を集めている。そうしたヘルステック系のスタートアップのなかで、治療に介入し、保険適用を目指すキュア・アップのようなスタートアップは少ない(筆者が確認した範囲では、不眠症治療用アプリを開発するサスメドなどは、キュア・アップと同様のアプローチをしている)。

 佐竹氏は、あくまでスタートアップ各社がさまざまな取り組みやアプローチをすることは、「あるべき姿だ」とした上で、自社の強みについて次のように語った。

「私自身が医師ですし、医療インフォマティクスを研究してきたバックグラウンドがあり、臨床現場で感じた理想の医療があります。確かに、ソフトウェア――つまりアプリというこれまで活用されてこなかったものを使っていますが、先人たちによって築き上げられたエビデンスに基づくアプローチが弊社の特徴だと考えています。そうした医療の専門的な知識と、それを実際のアルゴリズムに落とし込む技術が弊社の強みです」(佐竹氏)。

 日本のヘルステック市場も伸びてはいるが、米国での注目度はさらに高く、ヘルスケアのスタートアップが昨年1月だけで調達した資金総額は約2860億円に上るとも報じられている。

 キュア・アップは昨年3月に米国支社を設立。高血圧領域の治療アプリでは、Welldocをはじめとしたスタートアップがしのぎを削っているが、同社のみがフェーズ3の治験段階(ランダム化比較試験の段階。研究対象者を、アプリでの治療や介入するグループと、従来型の治療を行うグループにランダムに分け、効果を検証する。患者を対象にした、大規模な有効性・安全性の検証をする私見フェーズ)と一歩リードしている。日本発のスタートアップが、資金が潤沢に集まる米国のヘルステックで認められる日もそう遠くはない。