今年を振り返る上で欠かせない、日大アメフト部をめぐる騒動。学生寮へ捜査が入ったことや、記者会見の衝撃は大きかった。そして、ついにアメフト部の廃部が決定した。廃部を巡ってはさまざまな意見が交わされたが……。(フリーライター 武藤弘樹)
日大アメフト部の廃部決定
違法薬物事件が社会問題化した要因
日本大学アメリカンフットボール部の廃部が決定した。アメフト部の違法薬物事件が、ここまでの社会問題となったのにはいくつかの要因がある。ひとつは名門アメフト部の5年前の「反則タックル」を含めて、2度目の大きな不祥事であること。
もうひとつが、大学側の対応の至らなさとパワハラ訴訟などの上層部のスキャンダラスな内輪揉め。
そしてもうひとつが、「廃部にするのが妥当か否か」という、世論が2つに分かれる難しい議論が存在したことである。これに関しては「責任の所在はどこに・どこまで問われるべきか」というそもそも判定の難しいテーマに加えて、「連帯責任」という考え方も絡んできて、複雑怪奇の様相を呈した。
「連帯責任」に関する議論については、今この時代だから出てきたのであろう気配もして、ひょっとしたら本件が今後の転換期となりうるかもしれず、後に詳述したい。
本稿では、日大アメフト部問題について読者諸氏の立脚点選びの一助となることを願って、一連の事態の整理と、それにまつわる代表的な意見を紹介していきたい。
アメフト部が「復権」から一転、
「隠蔽体質」と批判されるまで
日大アメフト部は大学アメフトにおいて輝かしい歴史を築き上げてきた名門中の名門であった。2018年に「反則タックル問題」と呼ばれる不祥事を起こし、それからここに至るまでの5年、新監督とコーチを外部(日大アメフト部出身者以外)から公募するなどして再建に取り組み、事情通が「復権を果たした」と語るほどの成果を挙げていた。