「子どもの留守番は虐待?」埼玉県のトンデモ条例廃案に感じる、怒りを通り越した不安子どもの留守番は虐待なのか?突如降ってわいた、不穏な議論の本質とは(写真はイメージです) Photo:PIXTA

子どもの留守番は虐待なのか。突如として議論を呼んだ自民党埼玉県議団が提出した条例改正案は、ひとまず大きな反発を受けて取り下げられるに至った。しかし、子どもにどの程度留守番をさせるかの基準は議論が分かれるところでもあり、今後もこのような問題提起が行われる可能性はある。(フリーライター 武藤弘樹)

大ブーイングの虐待禁止条例改正案
不穏さは完全に晴れず

 「子どもの留守番は虐待」などの新たな基準を盛り込んだ条例改正案が、世論や身内からの壮大な反対にあって、これを発議していた自民党埼玉県議団が自ら案を撤回する形でひとまず落着した。

 県議団の田村琢実団長は10月10日に行われた会見で、「今日取り下げを決定したので今後はゼロベース」と説明しつつも、「改正案自体に瑕疵はなかったが、安全配慮義務への言及がなかったことなどの点で、ひとえに説明不足で誤解を招き、県民・国民の皆様を不安にさせてしまったことをお詫びします」といったトーンに終止し、その“説明不足”で不安にさせられている県民・国民は、もはや説明不足といった次元ではなく、その改正案自体が瑕疵の塊にしか思えず、本会議可決という当面の危急は回避できてホッとしたものの、「今後大丈夫なの……?」という新たな不安の種を植え付けられたのであった。

 県議団が多数派閥のゴリ押しをせずに、すんでのところで踏みとどまった点は評価したいが、民意や人々の生活実態からあまりにもかけ離れた条例改正案が提出されたという突拍子のなさから、県議団に他の団体が関与している噂なども複数出てきているくらいであって、完全に晴れやかな終幕を迎えたとは到底言い難い。

 裏の事情に言及するほどの材料が現時点では手元にないので、本稿ではそこには触れないことにして、会見で語られた言葉や海外の子育て事情などを手がかりに、一児の子を持つ庶民として、「埼玉県で今後同種の条例が可決される可能性」について占ってみたい。