中国の「隠れ債務」問題が日本のバブル崩壊より危うい理由、中国格付け見通し“ネガティブ”にPhoto:PIXTA

12月5日に信用格付け大手ムーディーズが中国の国債格付けの引き下げを発表すると、中国本土株市場は下落し、外国為替市場では人民元が売られた。当面、中国からの資金流出が加速しそうだ。今後は地方政府の財政破綻リスクが上昇し、雇用・所得環境の厳しさは高まり、個人消費も伸び悩むだろう。企業の業績悪化やデフレ経済も懸念されるが、それだけではない。中国は、わが国すらバブル崩壊後に経験しなかった事態に直面する恐れを抱える。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

中国地方政府の“隠れ債務”が深刻

 12月5日、大手信用格付けの米ムーディーズは、中国国債の信用格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」(弱含み)に引き下げた。中国の不動産バブルが崩壊し公的債務の増加が懸念されることに加えて、地方政府の財政が悪化していることは見逃せない。特に、地方政府の資金調達の組織である融資平台の“隠れ債務”の問題は深刻さを増している。

 振り返れば2020年8月、中国政府は不動産バブルの拡大を止めるため、不動産関連企業に対する融資規制を強化した。その措置によって、多くの不動産関連企業の資金繰りが悪化し、不動産バブルはもろくも崩れた。それに伴い地方政府の歳入は減少し、融資平台の業績および財務内容は悪化しデフォルト懸念も上昇した。これが、いわゆる地方政府の隠れ債務問題だ。

 直近の話に戻ると23年12月6日、ムーディーズは地方融資平台26社を「格下げ方向で見直す」と発表。「問題解決に中央政府の財政出動は不可避」とも指摘している。

 中国全体で地方融資平台や不動産企業の不良債権処理が遅れると、財政破綻に陥る地方政府が増えることが懸念される。中国経済全体に信用不安が広がり、海外への資金流出は増大する可能性もある。中国経済の先行き懸念の高まりは避けられそうにない。