BRICSに参加した中国の習近平国家主席南アフリカ・ヨハネスブルグで開かれたBRICSに参加した中国の習近平国家主席=8月24日 Photo:Per-Anders Pettersson/gettyimages

中国経済が不動産バブルの崩壊やデフレの進行で低迷し、「一帯一路」構想への懸念が高まっている。9月9日、イタリアのメローニ首相は、中国に「一帯一路を離脱する意向を伝えた」と報じられた。今後そうした国は増えるかもしれない。中国政府にとって国際社会における求心力の低下は一大事であり、習近平政権は国民の目を台湾併合へ向ける可能性も懸念される。日米欧は、インド太平洋への艦船派遣などに加え、AI(人工知能)など成長分野で連携を強化すべきだ。経済安全保障に関わるデータが中国に流出しないよう、規制や制裁を強化する動きにも注目したい。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

独、伊が「中国依存度」を弱める動き
「一帯一路」に慎重になる国が増えている

 中国経済がかつての勢いを失っていることで、世界の勢力構図に微妙な変化が出始めている。これまで中国依存度の高かったドイツでは、少しずつではあるが中国依存度を弱める動きがみえる。また、イタリアのメローニ首相は「“一帯一路”の構想に参画しなくても、中国と良い関係を目指すことは可能」と述べ、一帯一路離脱の可能性を示唆。9月にはタヤーニ外相が一帯一路に対して、「期待した成果をもたらさなかった」と踏み込んだ。

 アジア諸国の中にも、中国の南シナ海での拡張主義に対して明確に批判する声が出ている。さらに、対中国政策の修正を検討する新興国も目立つようになった。

 中国は不動産バブルが崩壊し、従来型の経済運営が限界を迎えていることが明らかだ。世界の経済環境の厳しさも増しており、国際社会の中国に対するスタンスは少しずつ変わり始めている。

 今後、一帯一路への参加継続に慎重になる国は増えるかもしれない。中国政府にとって重要な政策である一帯一路の、実効性に疑問符が付くことは、政権の求心力にも負の影響を与える。それを防ぐため、習近平政権は国民の目を台湾併合へ向ける可能性も懸念される。国内世論を味方につけようと、中国が海洋進出などを強化する可能性は排除できない。