不良債権増加“負の連鎖”が鮮明

 地方融資平台の債務は、地方政府の予算に含まれない。公式統計にも計上されないため、隠れ債務と呼ばれている。国際通貨基金(IMF)によると23年、地方融資平台の債務残高は中国のGDP比53%、66兆元(約1320兆円)に達する見込みだ。地方政府の手に負えない水準に隠れ債務が膨張している。

 中国では、地方融資平台の債務に“暗黙の政府保証”が付く、との見方が多い。元利金の返済の遅延、不履行(デフォルト)が起きた場合、政府が返済を保証するはず、と国民は妄信しているのだ。

 23年夏、中国政府は隠れ債務問題への懸念を抑えるために、地方政府の債券発行枠を拡大した。報道では1.5兆元(30兆円)程度の債券発行が指示された。中国政府は地方政府に目先の元利金返済の一部を肩代わりさせようとしているが、財政悪化により地方政府が隠れ債務問題を解決するのは難しい。

 懸念されるのは、地方政府の隠れ債務問題が、家計のバランスシート調整を激化させる恐れだ。地方融資平台は、いわゆる“シャドーバンク”(預金を受け入れずに資金調達を行う投資ファンド)から資金を借り入れた。それは高利回りの投資商品である信託商品に組み入れられ、中国の個人にとって重要な資金運用手段になった。

 ところが11月、シャドーバンク大手である中植企業集団の債務超過が判明した。不動産バブル崩壊による地方政府の隠れ債務問題は、不動産分野の不良債権増加とともにシャドーバンク業界を侵食し始めた。シャドーバンクのバランスシートの劣化によって、信託商品のデフォルトリスクは上昇している。

 不動産バブル膨張に伴う先行きの楽観、暗黙の政府保証の思い込みに浸り、信託商品を購入した個人の一部は、中国の金融当局に事態解決に向け介入するよう要請した。不動産市況の悪化に端を発する地方政府の財政悪化、隠れ債務問題の深刻化、経済全体での不良債権増加という負の連鎖が鮮明だ。