高まる中国地方政府の信用不安
ムーディーズは中国経済全体で下振れのリスクが高まったと判断し、国債の格付け見通しを引き下げた。さらに近い将来、中国の格付けをA1(シングルA+に相当)から引き下げる可能性もある。
懸念されるのは、中央政府よりも、むしろ地方政府の財政状態だろう。リーマンショック後、中国政府は4兆元(当時の邦貨換算額で約57兆円)の経済対策を打ち出したが、財源の確保を担ったのは主に地方政府だった。
地方政府は、税収に加え土地を碧桂園(カントリー・ガーデン)や恒大集団(エバーグランデ・グループ)など不動産デベロッパーに売却してきた。政府が投資促進を呼びかけマンション建設などを支援する中、デベロッパーは需要を上回る勢いで住宅を建設した。政府の支援や、高い成長期待を背景に、住宅価格の上昇は間違いないといった過度な楽観がまん延した。
価格上昇により、地方政府の土地譲渡益は増えていた。そして、道路の建設や鉄道の延伸などインフラ投資に資金を再配分することによって、雇用を生み出した。また、半導体やEVなどの産業補助金政策も強化した。
銀行からの借り入れが規制された地方政府は、より多くの投資資金を獲得するために、融資平台と呼ばれる企業を増やした。地方融資平台は、債券発行や投資ファンドから資金を調達することで、不動産やインフラ投資を増やした。こうして不動産バブルの熱狂に浸り、中国経済は投資に依存した経済成長メカニズムを確立した。
しかし20年8月、事態は一変。中国政府は不動産融資規制を強化した。不動産デベロッパーの資金繰りは枯渇し、建設が停止し、未完成のまま放置される物件も急増した。新築・中古の住宅価格は下落。土地需要は減少し、地方政府の主要財源である土地譲渡益も落ち込んだ。不動産バブルは崩壊し、地方融資平台の信用不安が顕在化した。