ヘルスからウェルネス
そして「ウェルビーイング」へ
私は新卒で食品会社の味の素に入社し、食と健康というテーマに携わりました。当時扱っていたのは、「アスパルテーム」という低カロリー甘味料です。ダイエットをうたったいわゆる「ゼロカロリー飲料」に世界中で広く使われていました。それを原材料にした飲料やヨーグルトなどの低カロリーコンセプト製品、砂糖を使わないシュガーレス菓子の開発を、クライアント企業と共同で行う仕事を担当しました。
その後、WHOが唯一、虫歯予防効果を認めた甘味料「キシリトール」に注目し、これを日本、韓国、中国を含むアジア市場に導入するため、28歳の時フィンランドの食品原料メーカーに移りました。その会社では15年間、アジアのマーケティング責任者として多くの国々の企業とさまざまな食品、医薬品、化粧品などのヘルスケアコンセプトの製品開発に携わる中でアジアの国々の人を健康にするプロジェクトを経験しました。
2007年、それらの経験と築いてきたネットワークを生かすため、コンサルティング会社であるインテグレートを立ち上げ、2010年には化粧品メーカーや下着メーカーと共に「美魔女コンテスト」の立ち上げに参画し、ミドルエイジ女性にとって欠かせない美と健康を融合した新市場を創造するなどの経験をしています。
長年にわたり、心と身体の健康に関連するさまざまなプロジェクトに携わってきた私が感じるのは、生活者が求める「健康」の価値観が大きく進化していることです。
身体が健康である状態である「ヘルス」から、身体、心が健康で安心な状態である「ウェルネス」を経て、現在では自分自身の心と体が本来あるべき状態で、より自分らしく生きることのできる「ウェルビーイング」が求められるようになりました。
今、幸せの在り方が大きく変化しています。多様な価値観が認められる世の中の流れの中で、画一的な幸せより一人ひとりの生き方、暮らし方に応じた幸せが求められています。
そんな時代において、ウェルビーイングという大きな潮流が、ヘルスケアやウェルネスといったこれまでの概念とは異なる、今まで存在しなかった新しい市場と産業を生み出していくことは間違いないと、私は思っています。
(インテグレート代表取締役CEO 藤田康人)