「一応の確認」で税務調査が行われることもある
実は、財産規模の大きな相続が行われたときには、たとえ相続税の申告に怪しい部分がなかったとしても、「確認のため」に一応、税務調査が行われることがあります。
それも、かなりの確率であります。そのため私は、財産が数億円を超えていたり、会社を経営していたりするお客様には、「やましいところがなくても、必ず税務調査は来ますからね」と伝えています。あらかじめ心の準備をしてもらい、もしも税務署から連絡が来ても、あわてないようにしてもらうためです。確認もまた、税務署の大切な仕事なのです。
「悪意ある納税者にエネルギーを注ぎたい」
以前、確認のために税務調査に訪れた調査官が、私にこんなことを話してくれました。
「ぼくたちは、真面目に申告をしている方の調査には、時間とエネルギーをあまり投下したくないんです。意図的に税金を逃れようと、嘘をついたりする悪意ある納税者に、徹底的に時間とエネルギーを注ぎたい。だから、橘さんのように内容をしっかりと確認して作っている申告については、いつも早く終わらせたいんですよ」
私はこの言葉を、とても誇りに思っています。と同時に、「税務調査官がどこに情熱を注いでいるのか」が表れている言葉だとも思います。
節税対策は、法律で認められている範囲内で。やましいことはしない。これが結局、心穏やかに生活を営んでいく上でとても大切なことなのです。
(本原稿は橘慶太著『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』から一部抜粋・追加加筆したものです)