やってはいけない!相続&生前贈与#6Photo:PIXTA

生前贈与は相続税対策の王道だ。とはいえ、全ての人に相続税がかかるわけではない。税額を軽減する控除を使い、「相続税がゼロ」になる人も意外に多い。特集『やってはいけない!相続&生前贈与』(全16回)の#6では、相続税がいくらになるかの計算法や、お得な5大控除を解説する。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

「週刊ダイヤモンド」2023年7月15日・22日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

生前贈与の節税術はそもそも必要?
実際の相続税額を把握しておこう

 相続税によって財産の半分近くを持っていかれてしまう――。

 こんな誤解をしている人は意外に多い。なにせ、相続税は相続財産が多いほど税率が上がる超累進課税だ。10%から段階的に上がっていき、最高税率は55%だ(下表参照)。この数字の印象が強いため、財産の半分近くという思い込みにつながっている。

 とはいえ、資産が多ければ多いほど税負担が重くなっていくことは事実なので、相続財産を減らす生前贈与は鉄板の相続税対策として広く利用されてきた。

 そして、生前贈与のルールが2024年1月1日から変わる。だが、23年中に相続税対策として「駆け込み贈与」をしておこうと、慌てて動きだすのはちょっと待った方がいい。そもそも自分の相続税はいったい幾らになるのか、相続税を支払う必要があるのかをまずは把握しておくべきだ。

 贈与が無駄骨に終わるどころか、場合によっては不必要な贈与税を納めるといった最悪の結果を生みかねないからだ。

 国税庁によれば、21年に亡くなった約144万人のうち、相続税の課税対象となったのは9.3%に当たる約13.4万人だ。

 つまり、9割以上のケースで相続税は発生せずゼロなのだ。

 生前贈与を検討する前に、わが家にどんな財産がどれだけあるか把握するとともに、相続税を節税できるお得な控除制度の活用を考えたい。次ページでは、相続税の計算法や、お得な控除について解説する。