だが、「ひとまず横に置く」という言葉の解釈はユニークだ。案件を白紙撤回して、ゼロから、衆人環視の下で手続きをやり直すという意味ではないのである。単に、西川社長が人選する委員会で、「過去の手続きが正当だった」というお墨付きを得ようというだけなのだ。

 換言すれば、どれほど疑問を投げ掛けられようと、オリックスの100%子会社「オリックス不動産」に、かんぽの宿の売却を決めた経緯は明かさないということだ。鳩山大臣に再三「出来レースと受け止められる懸念がある」と問い質された案件を、お手盛りのできる委員会で正当化しようというのは無茶だろう。

 ちなみに、筆者の手許にある日本郵政作成の資料を総合すると、昨年5月、かんぽの宿の買収に名乗りをあげた企業は全部で27社あった。

 そこで、まず、日本郵政は予備審査を行い、5社を失格にした。残りの22社は、郵政の言う“第一次提案”の提出を許されたが、なぜか15社が辞退してしまった。実際に、提案に漕ぎ着けたのは、7社に過ぎなかった。さらに、日本郵政は、この7社をふるいにかけて、3社を残した。この3社を対象に、第2次提案を募ったが、またもや1社が辞退した。一部報道によると、2社の中では、109億円のオリックスが、ホテル運営会社の61億円を上回り、勝ち名乗りをあげたというのだ。

 しかし、日本郵政は頑なに、オリックス以外の26社の社名の公表を拒んできた。最後に落ちた企業以外は、入札額や辞退の理由さえ伏せている。耳を疑うのは、その拒否の理由である。民主党に提出した書面で、「(社名、入札額の開示は)株価が変動するなど経営に影響を及ぼす可能性がある上場企業もある」と拒んでいるからだ。何ヵ月も前の企業買収の失敗が株価に影響すると本気で信じているのだろうか。

 ちょっと視点を変えてみよう。最終的な売却条件はどういうものだったのだろうか。繰り返し、日本郵政に問い合わせて得た公式回答は、「ラフな言い方になるが」と前置きしたうえで、(1)(かんぽの宿の)事業をする、(2)(日本郵政の)承諾を得ない限り、2年以内に転売しない、(3)現行の給与水準で、(希望する現従業員と)雇用契約を結ぶ。民間企業は簡単に人員解雇をできないから、何年維持といった条件は一切ない――というものだ。

 この程度の条件が、1、2次あわせて、16社もの辞退を呼ぶほど厳しいものとは俄かには信じ難い。実際、ある総務省幹部は「ある国内金融機関系のファンドから、辞退を強要されたと聞いている。このファンドは、従わないと、ゆうちょ銀行など、日本郵政グループの他の取引を失う可能性があると示唆されたそうだ」と明かす。

 さらに、週刊新潮2月12日号の記事「『かんぽの宿』109億円オリックスに『400億円』で負けた」の中で、400億円での買収を示唆した大阪の不動産業者らの企業連合が、5分間の面接しか受けられず、門前払いを食ったとの情報も紹介されている。