2024年3月期第2四半期決算会見時のENEOSホールディングス、斉藤猛社長(当時)2024年3月期第2四半期決算会見時のENEOSホールディングス、斉藤猛社長(当時) Photo by Masataka Tsuchimoto

2年連続で経営トップがセクハラで事実上のクビとなるお粗末さを世間に露呈した石油元売り最大手、ENEOSホールディングス。寡占化した業界でのトップ企業の慢心を指摘する声は多い。今回、解任された斉藤猛前社長は前回の主役、杉森務前会長と同じ営業畑で“子飼い”とされてきた。2代続けて経営トップが失脚したことで、同社の経営路線はどうなるのか。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

代表取締役3人中2人がアウトで
旧東燃の宮田氏が社長代行に

 本社社屋が皇居を臨むほど“超”大企業の2年連続のお粗末に、開いた口がふさがらない――。

 石油元売り最大手、ENEOSホールディングスは12月19日、経営トップだった斉藤猛社長を同日付で解任すると発表した。理由はセクハラだ。

 同社によると、斉藤氏は、谷田部靖副社長、須永耕太郎常務執行役員と共に参加した懇親の場で、酔った状態で同席した女性に抱きついた。11月末に同社コンプライアンスホットライン窓口へ内部通報があり、監査等委員会が事実と判断し、処分に至った。

 同席していたコンプライアンス部門トップの谷田部氏も辞任勧告に基づいて辞任し、「当該女性に対し、性別役割分担意識を窺わせるような不適切発言をした」(発表文ママ)須永氏は月額報酬30%カット(3カ月)となった。斉藤氏はもちろん、谷田部氏も代表取締役であり、3人いる代表取締役の2人が一気に“討ち死に”となる異常事態となった。

 同社では、斉藤氏の前の経営トップ、杉森務前会長CEO(最高経営責任者)も昨年、飲食店でのセクハラなどがきっかけで辞任したばかり。この時は「一身上の都合」だとして辞任した約1カ月後、週刊誌報道でセクハラなどが背景にあったことが露呈し、「恥の上塗り」と揶揄(やゆ)された。今回は隠ぺいこそなかったものの、恥の「三重塗り」となった形だ。

 2024年4月以降の新体制決定までは、残る最後の代表取締役、宮田知秀副社長(58歳、旧東燃ゼネラル石油出身)が社長を代行する。17年にJXホールディングス(HD、旧日本石油)と経営統合した社内少数派がまさかの役回りを引き受けることになる。

 そのまま宮田氏体制となるか、多数派である旧日本石油(日石)出身の役員からの抜擢(ばってき)となるかは定かではない。いずれにせよ、杉森氏に加え、子飼いとされていた斉藤氏が失脚したことで、経営路線はどのような変化があり得るのだろうか。