「しまった、と思った瞬間にはもう食らっていました。パンチは全然見えていないです。本当に一瞬でガツンともらった。僕は倒れたときに休むのが嫌いなんです。だから休まず、すぐに立ったんです」

 立ち上がり、試合を再開すると、右ストレート、左フックを浴び、よろめいた。自然とコーナーに下げられる。左、右と次々パンチが飛んでくる。ボディーワークを使い、必死に反応した。井上の右ストレートに対して上体をかがめて避けた瞬間、ゴツンと頭部に当たった。佐野はさほど衝撃を感じなかったが、このときアクシデントが起こっていた。井上が右拳を痛めたのだ。

 佐野は左を3発突き、井上をリング中央に戻す。一呼吸置く間もなく、今度は視界の外から左フックが飛んできた。

 まるで嵐の中にいるような3分間が終わった。