美術館に行っても「きれい!」「すごい!」「ヤバい!」という感想しかでてこない。でも、いつか美術をもっと楽しめるようになりたい。海外の美術館にも足を運んで、有名な絵画を鑑賞したい! そんなふうに思ったことはないでしょうか? この記事では、書籍『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から、ご指名殺到の美術旅行添乗員、山上やすお氏の解説で「知っておきたい名画の見方」から「誰かに話したくなる興味深いエピソード」まで、わかりやすく紹介します。

牛乳を注ぐ女 ヨハネス・フェルメール『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』

フェルメールが伝えようとしたメッセージとは?

──出た! フェルメールの「牛乳を注ぐ女」! ここにあったんですね~。

はい、こちらは国立美術館の宝です! やっぱりこの「牛乳」も外せないなと思いまして♪

──だから「牛乳」って略し方やめてもらえませんか?(笑)それにしてもこの絵はきれいですよね…。この女性はメイドさんなんでしょうか?

そうですね、彼女はこの家に仕えるメイドさんで、机にちぎられたパンがいくつも載っているところを見ると、ブレッドプディングを作っているのかもしれません。

──ブレッドプディング?

はい。当時のオランダでは乾燥して硬くなったパンを、こうして食べることがありました。ポットの中にはカスタードが入っていて、そこにパンを入れて、最後にダマにならないように静かに牛乳を注いでいく…。

──そう聞くだけでゆったりとした時間が感じられる気がしますね。ところで、きれいな絵だからいいんですけど、フェルメールはどうしてこんな場面を描こうと思ったんですかね? 主人や奥さんを描くならわかるけど、なんでメイドさんを…。

いいところに気がつかれましたね。恐らくフェルメールがこの絵を通して表現したかったのは、「プリンを作っているメイドさん」ではないと思うんです。

──え、そうとしか考えられませんが、他に何があるんですか?

この作品のメッセージは恐らく、女性の行為から読み取るもの。

つまり、自らの仕事に対して誠実に、勤勉でいること自体がこれほど美しいことであり、それを称賛している絵になっているのです。

──なるほど! つまり道徳の教科書のようなものですか?

そうでしょうね。また、当時のオランダはキリスト教のプロテスタントという清貧さをよしとする宗派の国です。

そうなると、固くなったパンをこうして丁寧に食べることが、清貧さを伝えるメッセージになっているのかもしれません。

──ほ~、深いですね~!

まあ正直フェルメールが何も言葉を残していないため、全て推測になってしまいますけどね。でもそれほど人々の関心を惹きつけるこの絵は、やっぱり名画だと思います。

──確かにそうですね。ただ…最近この絵を見ると、なんにでも牛乳を注ぐ女に見えてしまうんです…(涙)。

「びじゅチューン!」(美術関連のテレビ番組)にそういう動画がありますよ(笑)。

(本記事は山上やすお著『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から一部を抜粋・改変したものです)