かねて電気自動車(EV)を購入する際の懸念材料となっていた航続距離や充電インフラの問題は、いまだに解決に至っていない。筆者もそろそろクルマを購入しようかと考えているが、EVという選択肢では生活の質を落とすのは間違いなさそうだ。そのいくつもの理由をお伝えしたい。(イトモス研究所所長 小倉健一)
EV充電器が普及しないのは
社会のニーズがないからではないのか?
日本経済新聞(電子版、9月16日)を読んでいたら、気になるニュースが目に飛び込んできた。『EVインフラはや老朽化 充電器閉鎖2.5倍、普及遅れ拍車』という見出しで、電気自動車(EV)の充電器が老朽化しているという内容だ。
2010年代半ばに国が補助した公共のEV充電器が更新期に入り、23年の閉鎖・休業数は8月までで前年の2.5倍の2700口に達したのだという。かつてEV社会の到来を予期した民間企業たちが、自社の敷地内に充電器の設置をしたものの、月数回程度の利用しかないこともあったようで、続々と撤退をしているそうだ。
14~15年当時、経済産業省が1000億円を投じた補助金事業で全国的な整備が進んだものの、20年度から充電器は純減しているという。
日経新聞はここから、欧州や中国ではEVの普及と充電器の整備が両輪で進み、EV後進国の日本はますます差をつけられる一方だと指摘している。「官民が歩調を合わせて取り組まなければ、負のスパイラルが定着しかねない」と記事を締めくくっていることから、日経新聞は経産省にまたしても大型の補助金を出させて、EV充電器の増加をさせたいと考えているのだろう。
しかし、どんなに頑張ったところで、そもそもEVの普及などできるのだろうか。そして、それが私たちにプラスの影響をもたらすものなのだろうか。EV充電器が普及しないのは、社会にとって必要がないからではないのか。今回は、少しだけ冷静になって「EV」の現状と未来を考えてみたい。