カタールW杯で大好評だった
解説者も「やらない」
本田が掲げた諸条件をフィルターにかければ、サッカー熱が急騰して久しい東南アジアが候補になるだろうか。その一つ、カンボジア代表で本田は23年5月まで実質的な監督を務めていた。
実質的な、とただし書きを付けたのは、監督を務めるために必須な指導者ライセンスを本田が取得していないからだ。ただ、取得できていない、というわけではない。あえて取得しないのだ。
本田は以前からプロ指導者ライセンスは任意にすべきだと主張。そうした本田の考え方に賛同したカンボジア協会はゼネラルマネジャー(GM)として契約。さらにライセンスを有する別の監督とも契約し、試合時には共にベンチに入るも、実際の指揮は本田が執る形が取られてきた。
メルボルンへ移籍した18年8月から履いてきた、選手、指導者、そして実業家の“三足のわらじ”の一つであるGMを退任した理由は契約満了だった。一定の成果こそ残したが、試合が行われる期間にしかカンボジアへ足を運ばない指導方法には疑問符も投げかけられた。
それでも「監督としてW杯優勝を果たしたい」と、さまざまな場で公言している本田は、カンボジアでのプロジェクトを終えた直後に自身のXを更新。英語でこんな言葉を投稿している。
「私はオマーン、ニュージーランド、アラブ首長国連邦、タイ、そして次のワールドカップに出場したい他の幾つかの国に興味があります」
言うまでもなく興味とは、実質的な監督への就任を指している。カンボジアでの指導体制継続を希望し、SNS上で逆オファーした形となったが、現時点で具体的な動きは見られていない。
一方で実業家としては、国内外でのサッカークラブ経営やスクール事業、スタートアップ企業を後押しする投資ファンドの運営など、さまざまなジャンルで幅広く活動している。23年末には自身が考案した「10歳以下で4人vs4人で争い、何度でも交代可能」という新ルールのサッカー全国大会を開催した。
ただ、22年のカタールW杯で大好評だった解説者は、本田らしい理由で「(今後は)やらない」と断言している。
「主役じゃないのが嫌な自分がいるんですよ」
その中で飛び出した10カ国目、通算で11番目となる所属チームに抱くプラン。メディアとのやりとりをあらためて読み返すと、生涯現役こそ謳(うた)い続けるものの、報酬を得るプロとしての自分に終止符を打つ舞台を、6月には38歳になる本田が探しているように思えてくる。