サッカーW杯(2026年大会)のアジア2次予選で、日本代表と対戦する国々が“難敵”ぞろいとなった。核実験や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に、内戦が続くシリア。1次予選の結果次第では、クーデター後の政情不安が続くミャンマーも加わるかもしれない。各国と対戦する際は「ピッチ外」でも選手たちが神経をすり減らすことが懸念される。歴史をひもとくと、特に北朝鮮代表とのアウェイ戦で、日本代表は極めて厳しい措置を課されてきた。その恐怖の実態とは――。(ノンフィクションライター 藤江直人)
FIFAランキングは日本が上だが
「サッカー以外」の要素が不安
サッカー・FIFAワールドカップ(W杯)の次回大会は、2026年6~7月にかけてアメリカ・カナダ・メキシコの3カ国で共同開催される。その出場を懸けたアジア予選が、早くも今年10月からスタートする。
予選にエントリーしている国および地域は「46」を数える。このうち日本の外務省から全土を対象に退避勧告が発出され、渡航に関しても「どのような目的であれ止めてください」と最大危険度のレベル4に指定されている国が3つある。アフガニスタンとイエメン、そしてシリアだ。
さらに、日本と国交がなく、核実験や弾道ミサイル発射を繰り返している北朝鮮も予選にエントリーしている。言わずもがなだが、日本の外務省はその全土を対象に「目的の如何を問わず、渡航は自粛してください」と国民に要請している。
仕組みの詳しい説明は割愛するが、今回のアジア予選も原則としてホーム&アウェイ方式で行われる。政情不安が続く国々と戦うチームの選手たちは、アウェイ戦の際、緊迫した情勢下にある敵地へ乗り込まねばならない(危険性を考慮した例外措置もある)。
そして、マレーシアの首都クアラルンプールで行われた2次予選の組み合わせ抽選会。日本代表(FIFAランキング20位)と同じ「グループB」には、外務省から渡航自粛要請が出されている上記の国々のうち、あろうことかシリア(94位)と北朝鮮(115位)が入ってきてしまった。
この面々との対戦に「安全保障上の懸念」を指摘する声も出ているが、それだけではない。
抽選の結果、1次予選(日本・シリア・北朝鮮は免除)の結果次第で、このグループBには160位のミャンマーか182位のマカオが入ることが決まった。このうちミャンマーは21年2月にクーデターが発生し、現在も外務省から危険度レベル2の「不要不急の渡航中止」がほぼ全土に発出されている。
もしミャンマーが1次予選を突破すれば、グループBで戦うライバル3カ国は、日本代表にとって「ピッチ外」でも神経をすり減らしかねない対戦相手ばかりになってしまうのだ。