脳の仕組みを活用し、4回連続記憶力日本一、日本人初の記憶力のグランドマスターになった著者による世界最高峰の勉強法をまとめた『世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる勉強法』から、記憶力が左右する試験、資格、英語、ビジネスほか、あらゆるシーンで効果を発揮するノウハウを徹底公開します。(初出:2017年3月27日)
夕食前に「宿題やりなさい!」は、じつに効果的だった!?
優秀な脳にどんどん頼って勉強しようというのが、本書のメインのテーマです。
しかし、皆さんの優秀な脳をもってしても、パフォーマンスのレベルは常に一定というわけではありません。
一日の中で脳のコンディションは変化していくからです。
そうであるなら、脳がバリバリ絶好調である時間に合わせれば、非常に効率のいい勉強ができるはずです。脳が働きやすい時間帯について説明します。
人間はやはり動物なので、動物としての本能から脳の一日のリズムが出来上がっていると考えるのが自然です。
そう考えるならば、生きていくうえでの最重要課題は食料の確保です。
そのため、狩りなどで食料を確保するときに一番脳がよく働いてくれる状態にあることが必要だったはずです。
生存本能というのはとても強いものなので、現代になっても脳の働きのリズムだけが残ったというわけです。
ということは、空腹になっている時間帯を中心に考えることによって脳がよく働く時間帯がわかるということです。
空腹といえば、まずは朝になります。「社会生活基本調査」(総務省調べ)では、日本人の平均起床時間はおよそ6時30分ですので、そこから朝起きてから午前10時ぐらいまでが、一日の中で最初に脳がよく働く時間帯であるということです。
特に起きてからの2時間は、集中力が高まる時間です。
発想力もこの時間帯に一番発揮することができるので、この時間帯を利用して勉強しない手はありません。
ただし、注意しなければならないこともあります。
それは起きたばかりの状態、つまり起き抜けのときは脳もまだ寝ぼけているので、この時に限っては何かを覚えようとする勉強は向いていません。
起き抜けの時間は、覚えるというよりも「復習」に充てるべきなのです。
この午前中の時間帯を過ぎると、脳のパフォーマンスは徐々に低下していきます。
この状態が午後4時ぐらいまで続きます。
そして午後4時ぐらいからまた脳が働き出し、夕食の時間まで記憶力も回復していきます。
家に帰ってきたら、夕食前までの時間帯は勉強に使うのが有効なのです。
夕食後、空腹が満たされた時間には、生存本能が危機感から解放されてしまい、脳が休憩モードに入ってしまうからです。
そこで食事をはさんで勉強する必要がある場合には、脳のパフォーマンスを下げないためにも食事は控えめにしましょう。
もしお腹がいっぱいになってしまったら、どうせ脳は動かないので、直後の勉強はあきらめて休憩に1時間ぐらい充てるとよいでしょう。
人によっては都合よくこの時間帯に合わせられない生活リズムだったり、仮にこの時間帯であっても疲れがたまっていて本来の能力が発揮できなかったりする場合もあるかと思います。
そんな人たちのために脳をリフレッシュさせ、パフォーマンスを再び引き上げる方法があります。
それが「仮眠」です。
コーネル大学の社会心理学者ジェームス・マースが名付けた、「パワーナップ」という15~30分の仮眠をとる方法があります。
この時間で仮眠をとると、脳のパフォーマンスはとらないときに比べ34%も向上することがわかったのです。
疲れているときなどは、たとえ勉強がそこで中断してしまうとしても思い切って15~30分の仮眠をとったほうが、我慢して続けるよりも脳がリフレッシュして、効率的な勉強ができるというわけですね。
ただ、このパワーナップをするときに気をつけなければいけないことがあります。
それが寝すぎないことです。
最適な仮眠時間は、先ほど挙げた15分から30分のあいだです。それを超えると、かえって疲労を増加させてしまう恐れがあるのです。
そうならないために、仮眠をとる直前にコーヒーなどのカフェイン飲料を摂っておきましょう。
カフェインには覚醒作用があります。
この覚醒作用が働き出すのが、まるでこのパワーナップに合わせたかのように摂取してから30分後なのです。カフェインが目覚まし時計のように、ちょうどよい時間に作用し寝すぎの防止にひと役買ってくれるというわけです。